ねずみの死骸を混入させてしまったすき家の店員も同じです。しっかりしていなかったから確認もせずにねずみの味噌汁を提供してしまった。
それで本社としては、二度とこのようなことが起きないように清掃をしたり、教育をしたりするわけです。焼肉きんぐでもその後、投稿主のお客様に直接謝罪する場を設けた様子で、投稿主によれば本社の結構上の方がとても丁寧に真摯に対応してくれたということです。これも表面的に解釈すれば、どちらの事案でも本社はその後きちんと事後対応したという事案に見えるわけです。
飲食業はサービス業の代表的な業種です。現場でのサービスの質が低下していて、本社がしっかりと対応をしなければならない事案が増えているという解釈でいいのでしょうか。
私はこれらの事案にはもう少し構造的な業界全体での課題があって、それはまだ解決の糸口が見つかっていない、そのような問題だと捉えています。3つの視点でお話ししたいと思います。
不祥事を起こすチェーン店に
共通する「店員の働き方」
すき家と焼肉きんぐ、どちらの事案でもとんでもないトラブルが起きているのですが、そのときにどちらも酷い目にあったお客様をお店はそのまま帰しています。だから、どちらもその対応に疑問を感じたお客様がSNSに投稿したことで大問題に発展します。
事案が起きたことも確かに問題なのですが、正当な理由でお怒りのお客様をそのまま帰す。こちらの方が実はもっと問題です。
プロの接客であればそんな対応は絶対にしません。ここが1つ目の視点で、現代の飲食チェーンではプロが接客しないことでコスパを向上させる仕組みを作ろうとしてきました。しかし、その仕組みのせいで想像もしなかったようなトラブルが起きた場合に問題が大きくなってしまうのです。
2つ目の視点は「なぜそのまま客を帰したのか?」。ポイントは、店員に権限がないことです。
たとえば、そのようなトラブルが起きた際に店員が「本日のお代は結構です。お詫びの印に次回お使いいただける食事券をご用意しました」とでも対応したとします。それで家に帰って封筒を開けたら中から3万円の商品券が出てきたとしたら……。