赤字続き「テスラ株」を割安で買った投資家が考えていたこと【アナリストには見抜けない100倍株の見つけ方】Photo:The Washington Post/gettyimages

創業当初から赤字続きで、アナリストからあまり良い評価をされていなかったTesla。しかしEV自動車事業は成功し、今や株価は急上昇。黎明期にtesla株を掴むことができた投資家は、どこを見ていたのか?赤字経営の企業の株を買うリスクをどのように見積もっていたのか?メタトレンドに乗って「推し投資」をする極意をお伝えする。※本稿は、中島 聡『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。

赤字経営だったTeslaの急成長を
アナリストが見抜けなかった理由

 私がTeslaへ本格的に投資をはじめたころ、同社はまだ赤字経営で、不安定な財務状況が続いていました。結局、Teslaが赤字から脱出できたのは2020年のことで、それまで2003年の創業からずっと赤字が続いていたのです。

 TeslaのCEOであるイーロン・マスク氏はビッグマウスで知られています。それは赤字経営のときから変わらず、業績とは裏腹に大胆なビジョンを語っていました。

 2014年には「2020年までに50万台のEV販売を見込んでいる」、2017年には「モデル3の生産を週5000台に増やす」と公言しています。いずれも、当時のTeslaが置かれた状況からは壮大すぎるビジョン。いわゆる「大風呂敷を広げた状態」だったのです。

 イーロン・マスクの発言を耳にした当時のアナリストたちは一様に困惑し、頭を抱えました。従来のファンダメンタルズ分析の枠組みでは、その大胆すぎるビジョンを具体的な数字や予測に落とし込む術を見出せなかったのです。結局、イーロン・マスクの描く壮大な未来図は机上の空論と見なされ、分析の対象外として隅へと追いやられてしまいました。

 しかしその後、Teslaの株価が急上昇していくことはご存じのとおりです。ファンダメンタルズ分析ではTeslaのような企業の将来性を正しく評価できなかったのです。

 例えば、イーロン・マスクのような経営者が「EVが爆発的に普及する」、あるいはNVIDIAのCEOジェンスン・フアン氏が「AI向けGPU(半導体チップ)の需要が急増する」と大きなビジョンを語っても、アナリストは「では、そうなった場合の売上をどう予測すればいい?」と立ち止まらざるを得ません。

 数値モデルに落とし込めない要素は、ファンダメンタルズ分析のプロセスから外さざるを得ないのです。その結果、ビジョンや将来性が株価に反映されにくくなるのです。

黎明期にTesla株を
掴むことができたワケ

 一方、私を含む一部の投資家は、実際にTeslaのクルマを購入し、その圧倒的なユーザー体験を通じて「このクルマは本当に世界を変えるかもしれない」「イーロン・マスクなら自動車業界の勢力図を塗り替えられる」と肌で感じました。数値では測れない将来性や、企業が大化けする可能性、そして「彼なら有言実行するかもしれない」という確信めいた期待感を持ちました。