1字1字読んで、ようやく意味がわかるのではダメ。パッと見た瞬間に、意味がスッと頭に入ってくるようにしなければなりません。決裁者の脳を「意味」を読み取ることに使わせるのではなく、提案内容を吟味することに使ってもらわなければならないのです。

 そのためには、どうすればよいか?
 方法はただひとつ。文字数を減らすことです。

 人間が一度に知覚できる文字数は、少ない人で9文字、多い人で13文字だと言われています。
 これを超えると、意味をつかみ取るのに「読む努力」が必要になるのです。

 だから、キーメッセージは13文字を目指すとよいでしょう。

キーメッセージで「すべてを説明」しない

 とはいえ、13文字以内という制限は、実際に書いてみるとなかなかハードルが高いものです。
 そこで、キーメッセージを13文字以内にするコツをいくつかご紹介したいと思います。

 まず、伝えるべき最重要ポイント以外の要素をすべてカットしていきます。
「~のための」「~による」「~について」といった平仮名や、「~を」などの助詞も省けるものが多いので、日本語としておかしくなければできるだけ取るようにしてください。

〈例文 ①〉
【before】売上未達を改善するための戦略提案について(20文字)
【after】売上未達改善の戦略提案(11文字)

 また、付随的な要素もすべてカットします。

〈例文 ②〉
【before】今月も加入者は12,013,249件の増加が見込まれる(25文字)
【after】加入者約1200万件増見込(13文字)

 この例文のように、主語述語のある文章にする必要はありませんし、「今月も」など付随的な要素もカットしても意味は通じます。

 数字は一目で理解できますし、何よりインパクトと説得力がありますから、重要な数字は必ずキーメッセージに残しましょう。

フォントは「これ」に決める

 キーメッセージに使用するフォントは「目に入りやすく」「誰でも読める」ものでなければなりません。おすすめは、ずばりこの3つです。

〈キーメッセージに最適のフォント〉
●PowerPoint:HGP創英角ゴシックUB
●Keynote:ヒラギノ角ゴStdN/ヒラギノ角ゴProN(ボールド)
●PowerPoint+Keynote:メイリオ(ボールド)

 これまで、さまざまなフォントを試してきましたが、パワポでは「HGP創英角ゴシックUB」、キーノートでは「ヒラギノ角ゴStdN」が、行間も文字間隔も詰まり過ぎず空き過ぎず、キーメッセージとして使用するにはちょうどいいバランスです。

 また、最近ではパワポとキーノートを併用する企業も増えてきたので、双方のソフトで互換性がある「メイリオ」を使うのもおすすめです。

 なお、キーメッセージ以外のテキスト(図解内のテキストも含む)で使いやすいフォントは、この3つです。

〈キーメッセージ以外に最適のフォント〉
●PowerPoint:MSPゴシック
●Keynote:ヒラギノ角ゴProN
●PowerPoint+Keynote:メイリオ

 これらのフォントは、キーメッセージとの差異が明確で、かつ読みやすいので、非常に使い勝手がいいと思います。

 ただし、キーメッセージを相手の心に響かせるために本質的に重要なのは、文字を目立たせることではなく、キーメッセージに「命」が宿るように言葉を磨き上げることだということは忘れないでください。

(本稿は、『プレゼン資料の図解化大全』より一部を抜粋・編集したものです)

前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年生まれ。ソフトバンクモバイルなどで17年にわたり移動体通信事業に従事。ソフトバンクアカデミア第一期生に選考され、プレゼンテーションにおいて第一位を獲得する。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも数多く担当。2013年12月にソフトバンクを退社、株式会社固を設立して、プレゼンテーションクリエイターとして独立。2000社を超える企業で、プレゼンテーション研修やコンサルティングを実施。ビジネス・プレゼンの第一人者として活躍中。著書に『【完全版】社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』(すべてダイヤモンド社)など。

堀口友恵(ほりぐち・ともえ)
埼玉県秩父市生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、ソフトバンクへ入社。技術企画、営業推進、新規事業展開などを担当する中で、プレゼンの経験と実績を積む。2017年に株式会社固へ転職し、スライドデザイナーとしての活動を始める。企業向け研修・ワークショップの担当や大学非常勤講師のほか、大手企業などのプレゼンのスライドデザインを担当し、のべ400件以上の資料作成やブラッシュアップを手がける。前田鎌利著の『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』のコンテンツやスライドの制作にも深く関わった。ITエンジニア本大賞2020プレゼン大会にて、ビジネス書部門大賞・審査員特別賞を受賞。小学生向けのオンライン講座「こどもプレゼン教室」を運営し、子どもたちのプレゼンスキルアップの支援も行っている。