プレゼントを袋に放りこむように…
命を奪った“移植手術”の結末
実際どうだったのかは、酒に酔うと患者たちを「バカヤロウ」呼ばわりするといった、ささいな点から読み取れるかもしれない。もっと大きなところでは、ヤギの性腺移植の手法がまったく一貫していない点にも注目したい。
動物の性腺をニンニクのように薄切りにして患者に移植するかと思えば、小さな睾丸を大きな睾丸内に接合することもあって、それをブリンクリーは、「リンゴにビー玉を埋めこむようなもの」といっている。

また手術自体も、まるでクリスマスプレゼントを袋に投げ入れるように簡単に済ませることがある。問題は技術にあるのではなく──実際本気でやればブリンクリーは腕のいい外科医なのだ──その杜撰といっていい品質管理にあった。
ブリンクリーが手術をするのは、カクテルアワー(アルコール飲料の出る夕食前の午後5時から8時頃)の前後であり、事業規模が拡大するにつれて、自分以上に医療資格の非常に怪しい助手たちに多くの仕事を任せるようになっていく。
結果、それから数年のうちに何十人という患者が亡くなった。手術中に死亡する例もあれば、家に帰ってまもなく息を引き取る場合もあった。重い身体障害に生涯苦しむことになる患者も大勢いた。
それでも、彼のクリニックを大量殺人工場と結びつける人間が現れるのは、もっとずっと先になってからで、この期間ブリンクリーは、手術の結果がどうであれ、患者から必ず代金を要求していた。