それに続く数世紀には、クローブや生姜が推奨されたほか、ロバの乳で睾丸をマッサージするといったことが各時代に流行した。
イングランドでは1000年頃、男たちが「ラブ・ブレッド」(裸の処女たちが畑を跳ねまわったあと、反時計まわりに収穫した小麦をつかったパン)なるものをむさぼり食っていた。中世には、弱ったペニスの潤滑剤として、ラクダのこぶに入っている脂肪を溶かしたものが好まれた。
犬とモルモットの睾丸乳剤で
元気を取り戻した
ホルモンを分泌する器官、すなわち内分泌腺に関する斬新な研究は、顔の両側に髭を長く伸ばした生理学者でハーバード大学の元教授、シャルル=エドゥアール・ブラウン=セカールの、奇想天外な発想から芽生えた。国の内外で高い評価を受ける研究を長きにわたって続けた後、彼は1880年の末にその道をはずれた。
70歳を過ぎて、「かんしゃく持ちになって生殖能力が衰え、胃腸障害と泌尿器障害」(別の医師の説明による)に苦しんだために、パリに構えた小さな研究所に引きこもって世間から忽然と姿を消した。
しかし1889年6月1日、フランス生物学会に再び現れた彼は、その講演で世間を大いに沸かせることになる。
自身の身体に犬とモルモットの睾丸乳剤を注入して、時の翁を征服したと発表したのである。「すべてががらりと変わった。そうして自身に備わっていた力を余すところなく取りもどした」とブラウン=セカールはいう。
すなわち、性的能力と、そんなものがあることも忘れかけていた「排便能力」の両方を取りもどしたというのだ。
人間の睾丸を自身に移植した
「尋常ではない三位一体」
JAMA(編集部注:Journal of the American Medical Association=JAMA。米国医師会が発行する医学雑誌)に入ってまもなく、モリス・フィッシュベイン(編集部注:JAMAの編集者)はシカゴの通りで医師のG・フランク・リッドストンに出くわした。