『恋愛指南』は『恋の技法』とも訳されていますが、かなりエグいことも書かれてます(笑)。この本を読む限り、古代ローマの人々は常にどこかで自分の心を躍らせる出会いがあるかもしれない、と思いながら過ごしていた印象を持ちますが、バブル時代の日本もそれに近いですね。

 円形劇場(コロシアム)へ見世物の見物に出かけた時にどうやって殿方を振り向かせたらいいか、どうやってお目当ての女の人に近づいていけばいいか。人前でのそのような振る舞い方をガイドラインとして書いてある本が売れるというのはなかなかですが、バブルの時代の日本も女性誌なんかはそんなネタで満載でしたから。懐かしいなあ。まあ、古今東西、恋愛に関して人の考えることはどこもだいたい同じということでしょう。

禁じられたものを求め
拒まれたものを欲する

ラテン語 『恋愛指南』には、どんな小さな埃でも取ってあげてそれをアピールしなさいとか、そういうことまで書いていますね。

ヤマザキ かなりどうでもいい、そんなことで女が振り向くわけないだろう、みたいなこともいっぱい書いてあって、なかなか楽しいです。他にも、女の人の焦らし方とかね。好きだからといって、アグレッシブに突撃などせず、相手を目いっぱい焦らしなさい、といった感じのことが書いてあったり。それは今でも通用することかもしれませんね(笑)。

ヤマザキ 私たちが選んだオウィディウスの恋愛についての格言を1つずつ振り返ると、現代を生きる私たちの理解の核心を突いているものも多い。「我々はいつも禁じられたものを求め、拒まれたものを欲する」というのは、例えば既婚者を好きになることを指していると理解できます。

「愛する者は誰でも兵士である」というのも、その通りですね。恋愛ほどボロボロになるような感情なんてなかなか他にはありませんから。誰かを好きになった、と思ったら戦う覚悟を持たないと、ボロボロになっちゃいますからね。昨今の日本の若者はそれが面倒だから、異性とは付き合わず同性の友達同士でわいわいやってるほうがいい、という傾向が強いようですけど、とにかく恋愛感情というのは厄介なものなんですよ。