ひとり社長なら、人付き合いのストレスが少ない

 会社勤めをしていた時に、一番苦労したのはコミュニケーションでした。

 ちょっとした雑談が苦手、ということはどうでも良くて、人として相性が良くない上司や同僚ともうまくやっていく必要があるということに大いに悩みました。

 私の上司は「バカ!」「そんなことも分からないのか!」「ふざけるな!」などという、それまでの人生で言われたことのない強い言葉を使う人でした。一方で、仕事の進め方やマナーなど、社会人として大切なことを丁寧に教育してくれたので、今の自分があるのはその上司のおかげだと感謝をしていますが、その上司の元で働いている時は、恐怖の日々でした。

 上司からの指示を正確に把握して、イメージ通りもしくはイメージ以上の成果物を提出する必要がありますが、発達障害が原因で意図せず、上司のイメージと異なる成果物を提出してしまうことが多々ありました。そのため、「また大声で怒鳴られるのでは?」とビクビクしていました。

 そんな精神状態では、萎縮してしまって、良い仕事をできるはずがありません。恐怖から萎縮をしてしまったり、頭が真っ白になってしまうことで仕事の質が低下し、ミスが増え、さらに怒鳴られて萎縮をして……という悪循環でした。

 しかし、ひとり社長になった今は、一緒に働く人やお客様を自分で選ぶことができます。

 人に対して敬意を払わない人と働くと、私は全く頑張れなくて、仕事のパフォーマンスが低くなってしまいます。ですから、そういった取引先やお客様からの依頼は受けないようにしています。

 一方で、相手の求めることを正確に理解して、イメージ通り、もしくはイメージ以上の成果物を提供することは、ひとり社長として仕事をする上でとても大切なポイントです。

坂口 康司(さかぐち・こうじ)
株式会社トータルクリエイツ代表取締役、株式会社ネクストクリエイツ代表取締役。
法政大学経済学部を卒業後、東証プライム上場のITベンチャーに就職するも適応できず、鬱のような状態に。精神科を受診したことで初めて、自分に発達障害があることを知る。入社後2年ほどで退社することになり、発達障害に向いていると言われるカメラマンとして生きることを決意。知人が起業した会社でカメラマンとして働き始めるが、約2年で再び退社することに。会社員には向いていないと痛感し、今後は「ひとり社長(個人事業主)」として生きる決意を固める。写真の見栄えが売上を左右する業界(レンタルスペース、宿泊施設など)の写真撮影に特化することに活路を見出し、2年半ほどで月収100万円を達成。現在は複数の会社を立ち上げ、民泊事業なども展開している。著書に『レンタルスペース投資の教科書』『カメラマンになっていきなり月収を100万円にする方法』(ともに自由国民社)がある。

AERA DIGITALより転載