掌で支える5つの役割
ドラッカー流マネジメント

 続いて、マネジメントが目指す役割について、ドラッカーの主張を基に私が考案した「パーム(掌)モデル」(Palm Model)を使って説明しましょう。

・マネジメントの前提:掌(てのひら)…掌は、5本の指を支えかつ統合します。ドラッカーはマネジメントの3つの役割(次に紹介する第1~第3の役割)を提唱したうえで、マネジメントの前提を「自らの組織をして社会に貢献させる」こととしました。

 筆者はこの前提こそがマネジメントにおける重要な要であると考え、ドラッカーが3つの役割とは別に論じていた2つの要素(役割)を筆者が第4、第5の役割として独自に追加したうえで、この前提を5つの役割を支える第0の要素を「マネジメント0(ゼロ)」と呼び、5本の指を支える掌に例えました。マネジメント0には、普遍的価値観・信条が含まれます。

・マネジメントの第1の役割(親指)…自らの組織が、その目的とミッションを果たすようにすることです。企業はそれぞれの事業目的を達成するため、学校や病院もそれぞれの社会課題を解決するために、一定の成果をあげることが期待されています。その期待に応えるように組織を運営することが、マネジメントの最も基本的な役割です。

・マネジメントの第2の役割(人さし指)…組織の仕事を生産的なものとし、働く個々のメンバーに成果をあげさせることです。自らの組織の目的とミッションを果たせるかどうかは、その組織で働く人それぞれの働きぶりや成果に左右されます。

 そして個々のメンバーが優れた成果を生むには、仕事自体が合理性・経済性に優れているなど、生産的な仕事であることが前提です。組織のマネジメントを担う管理職は、底がないバケツで水汲みをさせる仕事をメンバーにさせてはいけないのです。

・マネジメントの第3の役割(中指)…自らが社会に与える影響に対する責任を果たすことです。

 例えば、自社製の商品やサービスが環境汚染をしていると判明した場合、マネジメントを担う管理職はそれを最小にするか無くす努力をする必要があります。先進国の企業が、1次加工工場を自国から途上国に移して建設する場合、環境汚染を輸出するようなことがあってはなりません。社会に与える影響を考慮しない事業は、持続的なビジネスにはつながりません。