(1)完全性(integrity)…「欠けているものが無い理想の状態」を意味します。機械的な意味が強い「完璧(perfection)」とは違い、倫理観など人間性が加味されています。ドラッカーは「マネジャーの決定」の完全性(integrity of managers determines)が、マネジメントの成否を決めるとしています(『MANAGEMENT;TASKS,RESPONSIBILITIES,PRACTICES』Preface,Peter F.Drucker,Harper)。
(2)共通善(common good)…ドラッカーは、「組織特に企業のマネジメント以外に、共通の善のために果たすべき責任を負える者はいない。もはや政治は主権者となりえず、共通の善の守り手ともなりえない」(『マネジメント』[上]p.367)としています。
例えば、人権は代表的な共通善の1つです。国連総会で採択された「誰1人取り残さない」というSDGsも、人類が共通に求めている善といえます。
(3)倫理(ethics)…古代ギリシャの医学者ヒポクラテスが弟子たちに説いたとされる「知りながら害をなすな」という言葉を、ドラッカーはマネジメントの倫理、責任の倫理として尊重しています(『マネジメント』[上]第28章プロフェッショナルの倫理、p.437)。
貢献こそが人の価値
ドラッカーの理想の人間像
ドラッカーが考える理想の人間像とは、「完全でありたいと努力する」などの普遍的価値観に基づく生き方をする「真摯さ(integrity of character)」を持ち、貧しい人々の人生の質の向上に貢献する「利他の心」(『マネジメント』[上]p.357)を実践し、自らに「何によって憶えられたいか」(『非営利組織の経営』p.219)を問い続け、社会に貢献する、「貢献人」であることです。
「貢献人」という言葉自体は、ドラッカーが『明日を支配するもの』第6章「自らをマネジメントする(Managing Oneself)」p.215で述べている「とくに知識労働者たるものは、自らの貢献は何でなければならないか(What should MY contribution be?)を自ら考えることができなければならない」から解釈して私が創った言葉です。
営利・非営利を問わず、あらゆる組織やチームの目的は、突き詰めれば社会への貢献にあります。組織・チームを率いるマネジャーがこれらの信条を持つことを、ドラッカーは魔物の再来を防ぎ「より良い社会」を実現するうえで、重要なポイントと考えていたのです。