判断を誤るのは誰にでもあることだ。後から振り返ると「なぜ気づかなかったのか」と不思議に思うような誤判断をしてしまうこともある。そこには一定の心理メカニズムが働いている。
例えば、自分が進めようとしている戦略の危うさを示すデータが手元にあったのに、それを無視して進めてしまう。何が判断力を曇らせるのか。
そこに働いているのが確証バイアスである。私たちは、自分を気分良くさせる情報、自分の判断を正当化してくれる情報、つまり自分にとって都合の良い情報に目を向け、都合の悪い情報は無視する認知のクセを持っている。
自分の考えを裏づける証拠となる情報には敏感なのに、矛盾する証拠となる情報には目をつぶってしまう。これが確証バイアスの本質だ。
例えば、自分が取ろうとしている戦略が危険であることを示すマーケティングデータや財務情報があっても、きちんと検討せず、見たことも忘れてしまう。そして、都合の良い情報ばかりを意識するため、リスクを無視した判断や、明らかな誤判断を下してしまうのである。
確証バイアスを克服するための対策

このような誤判断を防ぐには、私たちが自分にとって都合の良い情報に偏りがちで、都合の悪い情報は見逃してしまう認知のクセを持っていることを常に意識しておく必要がある。意識することで、都合の悪い情報も含め、あらゆる情報に均等に注意を向ける姿勢を取ることができる。
誰もが確証バイアスに陥りやすいことを研修などで教え、それを踏まえて判断するようアドバイスすることで、判断ミスを減らすことができるはずだ。自分が確証バイアスに陥っていないかを絶えずモニターしながら仕事を進める必要性を教えることも大切である。確証バイアスについての知識とともに、メタ認知的モニタリングの姿勢を身につけることで、判断ミスは確実に減っていくだろう。
私たちは、自分にとって脅威となる情報や不都合な情報には目をつぶり、都合の良い情報ばかりを選択的に取り込む認知傾向を持つ。それを意識していないと、重大な判断ミスをしてしまう恐れがある。そうした事態を防ぐためにも、確証バイアスのことを常に念頭に置いておくことが大切である。