感じのいいあの人は知っている。
「読みやすい文章」にするための3つのコツ
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

「ねじれ」と「順番」を整えよう!
頭に浮かんだことをどんどん書いていくと、いつのまにか読みづらい文章になってしまいがち。そこで今回は、文章を整えるときのポイントを紹介します。
①一文をコンパクトに
一文内で伝えたいことが3つ以上あると、文章の構造がつかみにくくなります。とくに話題や時系列が変わるときは文章を分割しましょう。
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【変更前】
この映画は、予告編を観たときからずっと気になっていて、友だちと初日に観に行ったんですが、主演の谷丸くんの演技が素晴らしすぎて、予想外なストーリー展開が多くて感動だったんですが、途中でトイレに行きたくなっちゃって、後半はモジモジしながら観てました(笑)。
【変更後】
この映画は、予告編を観たときからずっと気になっていたんです! 友だちと初日に観に行きました。主演の谷丸くんの演技が素晴らしすぎたし、予想外のストーリー展開で感動。ただ途中でトイレに行きたくなっちゃって、後半はモジモジしながら観てました(笑)。
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②「主述のねじれ」を解消する
前の例文もそうなのですが、主語と述語がかみ合っていないと、違和感を与える「読みづらい文章」になります。
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【変更前】
このふんどしの魅力は、クッション性が高くてはき心地が抜群で、デザインもスタイリッシュで、毎日はきたくなります。
【変更後】
このふんどしの魅力は、高いクッション性と抜群のはき心地、そしてスタイリッシュなデザインです。毎日はきたくなります。
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【変更前】を見てください。主語が「ふんどしの魅力」なのに、述語が「はきたくなります」になっています。ふんどしの魅力ははけるものではありませんよね。これが「主述のねじれ」です。
主語と述語のねじれを解消する手っ取り早い方法は、主語か述語のどちらかを修正する、もしくは複数の文に分けることです。
③「情報の順番」を整える
こちらもいろんなところで見かける「読みづらい文章」です。
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良質な有機いちごだけで作るので数に限りがあるのですが、当園では昨年株を大きく剪定した後に伸びた新しいランナーから元気な株がすくすくと育ち、多くの実がついて豊作で良質ないちごが収穫できました。
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どうでしょう。なんとなく意味はわかるものの、読みづらさを感じませんか?
理由は2つあります。1つは一文が長くて要素が多いこと。もう1つは、冒頭で「数に限りがある」と述べているのに、後半では「豊作」と一見矛盾する表現になっていることです。
「①結論(数量限定)→②栽培過程→③収穫結果(豊作)」という順序で書くなら、①と②の間に適切なつなぎ言葉が必要です。いまのままだと、「数量限定の話」と「栽培過程の説明」に関連性が見いだせません。
この問題を解決するシンプルな方法として、「時系列」に沿って整理してみましょう。
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当園のいちごは、昨年株の剪定をしたところ、新しい株がとても元気に育ちました。おかげで今年は豊作で、たくさんの実を収穫できています。ただ、有機栽培にこだわって育てているため、販売できる数には限りがあります。
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この例文から学べることはもう1つあります。それは「ですが」の使い方です。
「昨日の会議の内容ですが、以下の通りとなります」「商品の発送方法ですが、宅配便のみとなります」のように、なんでもかんでも「ですが」をつける人をよく見かけます。
ただ、安易に「ですが」を使うと文章の要点がぼやけがちですし、一瞬「逆説の意味かな」と読み手をミスリードさせる恐れがあります。
前者は「昨日の会議の内容は以下の通りです」、後者は「なお、商品の発送は宅配便のみとなります」のように直接的に書いたほうが読みやすくなりますし、誤解も防げます。
④大切なことは「前」にもってくる
メールやチャットでは、優先順位が高い要素を「前」にもってくると、伝えたいことが相手の印象に残りやすくなります。
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【変更前】
新サービスを庄子商事に提案するために、来週の水曜10時から打ち合わせをしましょう。
【変更後】
21日(水)10時から、庄子商事への新サービス提案について打ち合わせをしましょう。==================
この例文の場合、もっとも重要なのは「来週の水曜10時」です。会議の目的は伝わっていなくても問題ありません(本当はよくないのですが)。
それよりも、日程を勘違いされたり、そもそも会議があること自体を見逃されたりするほうが深刻です。
【変更後】を見てください。日程を一番前にもってきていますよね。こうすることで、読み手としても、パッと見た瞬間に「あっ、この日に会議があるんだ」という意識をもてます。忙しくても本文が長くても見逃しにくくなる。
加えて、「来週の水曜」を「21日(水)」に修正しています。来週の水曜を「20日」や「22日」と勘違いさせないためです。
数字は具体性を付与する効果があるので、数字にできるところは積極的に置き換えましょう。
書かれてあることはすべて読むのが当たり前だ――。そう思いたい気持ちはよくわかります。でも、現実にはなかなか難しいですよね。
たとえ仕事のやりとりであっても、人はきっちり文章を読んでいないもの。
「読んでない相手が悪い」じゃなくて「わかりやすく伝えられなかった自分が悪い」。そう考えたほうが、自身の書く力を高めるきっかけになりますし、余計なストレスを抱えずに済むと思います。
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。
※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子 錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。