もちろん、このような不測の事態に備えて、大阪市消防局も万全の体制でのぞんでいるはずだ。万博会場の南東側、日本館からもほど近いバックヤード棟には消防待機所があるので、火災あれば迅速に対応をしてくれるはずだ。

 しかも、この消防待機所では大阪発祥の消防車メーカー、モリタホールディングスが最新鋭の消防車両やシステムを持ち込み、大阪市消防局と連携して実証実験を行っていると報道されているので心強い限りだ。

 ただ、それでも一抹の不安がよぎるのは、やはりこの万博の立地だ。

 夢洲というのは、同じく人工島である舞洲との間に架かる「夢舞大橋」と、咲洲との間を海中で結ぶ「夢咲トンネル」という2つのアクセスルートしかない。

 メガソーラー火災に限らず、南海トラフ地震や津波、テロなど不測のアクシデントが発生したら、夢洲の中にいる数万人が一気にこの2つのルートに押し寄せる。過去の事故を教訓にすれば「将棋倒し」や、韓国の梨泰院であった「群衆雪崩」も想定される。

 また、もし交通集中や事故などでこの2つのルートが塞がれてしまった場合、数万人が陸の孤島に取り残されてしまう。先ほど述べたように、メガソーラー火災で発生する「有毒ガス」から逃れる術もなく、モロに吸い込んでしまう人が多数でるかもしれない。

 この「2つのルートだけで人々をパニックなく避難させられるのか」というのは、万博の後にできる「大阪IR」にも共通している課題だ。

 …という話をしている間も、万博会場の安全を守るために昼夜問わず奮闘をしている方たちがたくさんいらっしゃる。その尽力には頭が下がる。

 来場する側としてせめてできることは、今述べたような「リスクのある立地」ということを常に頭に入れて、不測の事態が起きた際にパニックにならず、冷静に行動をすることしかない。

 これまで述べたようなことがすべて杞憂で終わり、大きなアクシデントなく半年の会期が終了することを心から祈って、本稿の結びとしたい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

逃げ場のない夢洲、万博会場は悲鳴の嵐…トラブルが続出する大阪万博で起きうる「最悪の事故」