先に中国市場での状況を紹介します。中国の自動車市場では新車に占める新エネ車(EVとPHEVの合計)の比率は昨年夏頃から自動車販売全体の5割を越え始めました。直近ではその約6割がEV、約4割がプラグインハイブリッド車(PHEV)で、BYDはその両方で高い市場シェアを誇っています。

 では車種別でどのブランドが売れているのかというと、2025年1~3月期の上海における販売データで販売台数1位なのがBYDの「シーガル」という日本では未発売のコンパクトカーです。日本車でいうとトヨタの「ヤリス」や日産の「ノート」、ホンダの「フィット」と同じようなサイズと言うとイメージしやすいでしょうか。EVの走行距離305キロの下位グレードの現地価格が7万3800元(約150万円)と非常にお安いのが特徴です。

 2位は同じくBYDのプラグインハイブリッド車の「ソングプラス」。かなり大きめのSUVです。そして3位に競合メーカーの五菱が発売する「宏光ミニEV」という軽自動車に近いサイズのコンパクトカーが入ります。

 日本でも直近年度の乗用車の販売台数ランキングではトヨタの「ヤリス」がトップに入り、軽自動車を加えるとホンダの「N-BOX」が1位になります。台数ベースでの売れ筋が小型車という観点では日本も中国も消費者ニーズは似ています。

 ただ、中国市場ではこれまで大型車は新エネ、小型車はガソリン車に寄っていたところから、2024年後半あたりから急激にコンパクトカーセグメントでもEVが台頭してきた点が日本とは異なります。実はガソリン車を含めた全乗用車ブランドの中でもBYDの「シーガル」が販売台数1位になっているというのは、中国市場における消費需要の大きな変化だと思います。

海外勢の参入を阻止してきた
日本独自の「ガラ軽」市場

 さて日本市場に視点を移します。2024年の国内新車販売台数の総計はおよそ442万台で、このうち約35%にあたる約156万台を軽自動車が占めます。今回、BYDはこの軽自動車市場でシェア40%を狙うそうです。台数にすれば年間約60万台超。そんなことができるのでしょうか。