感情の動物である人間同士のコミュニケーションの本質は、言葉のやりとりではなく、感情のやりとりではないでしょうか。社会生活では、人には敬意を持って接するのは当然のことながら、この3点セットを実践していくことで、人間関係に潤いがもたらされます。
日本能率協会が新入社員向けセミナーの参加者を対象に、2022年4月にインターネットで実施した調査(回答者545人)によれば、理想の上司や先輩が持つ資質として、「丁寧な指導」を挙げた人が最多の71.7%を占めました。10年前の2012年に行われた同様の調査と比較すると、約19ポイント増加しています。ちなみに「叱ってくれる」は、17.6%にとどまり、2012年の調査より約16ポイント減少しました(「北海道新聞」同年9月27日付朝刊)。
あくまでも私見ながら、上司が部下を指導する際に、部下への気配り・目配り・心配りを忘れなければ、より指導の効果が発揮されると思います。気配り・目配り・心配りをするには、観察力や想像力が必要です。それは、「上司力」としての「気づきの感性」とでもいえましょう。指導している目の前の部下の状態を瞬時に把握し、部下が何を望んでいるかを見分ける力です。
幾つか例を挙げましょう。部下が仕事で誤りを犯して精神的に落ち込んでいるならば、まずは寄り添い、共に改善策を考える。感情的な言動が部下に見て取れたならば、環境を整えて気を落ち着かせてから、部下の話に耳を傾ける。指導に納得がいかない表情をかすかにでも読み取れたならば、上司から問いを発しつつ部下の意向や思考を引き出して、すり合わせる。
もちろん部下に迎合する必要はまったくありません。ですが、上司には部下の立場に思いを馳せて指導することが求められます。それこそ、気配り・目配りのなせる業でしょうね。また、さりげなさが何よりも肝要ですが、食事を共にすることや家族への気遣いなどは、心配りの典型です。

同様に、生徒・学生に指導・支援する教員にも、気づきの感性が求められます。彼ら彼女らの主体性や自主性を引き出す上で不可欠な「教師力」の1つです。教師然とした上から目線の時代は終わったのかもしれません。気づきの感性は、試行錯誤を積み重ねて意識的に養っていく以外に道はないのです。ある意味、スキルなのですから。
ならば、スキルアップをはかるのみ。そう思うのです。