「マスメディアやネットを見てはいけない」「グルは絶対」地下鉄サリン事件から30年、脱会信者が語る「アレフ」の今公安調査庁が2024年5月、アレフの京都施設(京都府)に立入検査をした際に確認した祭壇。左上に麻原元死刑囚の写真が飾られている ※写真は公安調査庁Webサイトより

 1995年3月20日に起きた地下鉄サリン事件から30年がたった。事件を起こしたオウム真理教の教祖・麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚の死刑も執行されたが、公安調査庁は同教団の後継団体はいまだ3つあるとみている。そのひとつ「アレフ」について、同庁は「現在も麻原への帰依を続け、事件当時を知らない若い世代をターゲットに勧誘活動を行っている」と警戒を続ける。約5年前にアレフに入信し、その後脱会した20代の女性がAERAの取材に応じ、アレフの勧誘の手口や“麻原信仰”の実態について証言した。

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「私の“黒歴史”が誰かの役に立つならと思い、お話させていただくことにしました」

 こう語るのは東日本在住の朝比奈凛さん(仮名/27歳女性)。24歳の時にアレフに入信した過去を持つ。

 きっかけは、2歳上の知り合いからの勧誘だった。

 当時社会人になったばかりだった朝比奈さんは、慣れない仕事に疲弊していた。趣味を通じて知り合い、“先輩”として慕っていた男性に相談すると、「お世話になっているカウンセラーの人を紹介するよ」と言われた。

 顔合わせの日、集合場所のファーストフード店に現れたのは、上下白い服をまとった40代くらいの女性だった。“カウンセラー”と名乗るその女性は、資料を見せながら心理学や仏教についての簡単な講義を始めた。最後に「さらに学びを深めたければ無料セミナーに参加しませんか?」と促してきた。

「もともと宗教や人間心理に関心があり、『セミナーに来れば心が強くなる』という誘い文句にも魅かれて、数日後に第1回を受講することにしました。カウンセラーには『すんなりと予定が合うのは私たちにご縁があるからですよ』と言われました」