従来とは正反対の
シン「肩透かしリアリティショック」

 そこに追い打ちをかけるのが、ホワイトな職場の「肩透かしリアリティショック」という新しいタイプのギャップです。

「研修のときより緩い」「全然マネジメントしてくれない」という声が辞める若手から聞かれます。これは「リアリティショック」と呼ばれる現象で、入社前の期待と入社後の現実のギャップに起因しています。パーソル研究所の調査によると、社会人1年目から3年目の人たちの約76%が「こんなはずじゃなかった」と感じています。

 これまでのリアリティショックは入ってみたら、仕事がきつかったというショックが主流でしたが、「肩透かしリアリティショック」は、「厳しい環境を覚悟したのに、実際は思った以上に緩かった」というものです。

 成長意欲の高い若手層が「この会社で思いっきり働いて成長したい」と意気込んで入社したにもかかわらず、残業規制などの影響で、企業側がその期待に応えられないという状況が生まれています。

 結果として会社が「自己成長が見込めない職場」という烙印を押されて、早期離職に繋がってしまうのです。このような現象は特に大企業や有名企業で起きやすく、企業側も対応に苦慮しています。「頑張れ」と言いながら「残業するな」というメッセージの矛盾に、若手は混乱し失望しているのです。

 コンプライアンスの厳しい現代では、上司も新人に対して及び腰のマネジメントをしがちです。パワハラと疑われることを恐れ、新人が「今一番できる仕事」にアサインしようとする傾向があります。しかし、新人自身にとっては既にできる仕事からは学ぶことがなく、それは次第に「こなし仕事」となり、成長感を感じられません。

 一方で、自宅や通勤途中でSNSを見ると、同期や元同級生が「リーダーに任命された」「大きな仕事を任された」「MVPを取った」などの情報が流れてきます。努力の過程は見えず結果だけが表示されるSNSの特性も相まって、自分の現状に対する不安と焦りが増幅されていきます。

 ある新卒社員は「私の仕事はエクセルを開いて閉じて送り返すだけ」と表現しました。有名な伝統企業のグループであるIT企業に入社したものの、大手企業ゆえの残業規制やコンプライアンスの厳しさから、上司が厳しい経験をアサインしてくれない。結果として物足りなさを感じ、他社の同期のSNS投稿を見て焦り、転職してしまったのです。

 このように、ホワイト企業の「優しすぎる」環境が、成長を渇望する若手社員の期待を裏切り、早期離職につながるという逆説的な現象が起きているのです。

「今は楽だけど、本当はもっと挑戦したい。でも気を遣われてアサインされない」という不安が、彼らを離職へと駆り立てているのです。

 今回はホワイト職場で離職が起きる背景と原因をお話しました。次回はそれに対する効果的な対処方法をお伝えします。最近入社してから悩んでいる方、また若手をマネジメントする立場の方にも役立つ内容をお届けします。

「ホワイトすぎるので辞めます」残業ゼロ・怒られない…なのに不安で辞める若手たち
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