岩男の幼少時代を
覚えている?

 そうだ、岩男ってそういう「こすい」キャラだった。のぶや嵩と同級生で、幼い頃、嵩をいじめていた。濱尾ノリタカになって人の良さそうなとぼけた感じになっていたので、つい好意的に見ていたが、子どものときの意地悪さを思うと、油断ならない。

 蘭子はそのときのことを覚えていていけ好かないと思っても顔には出さないのか、すっかり忘れるほど岩男に興味がないのか、どちらにしても好きでもない人と結婚しようとしている。

 のぶとメイコの連携によって、蘭子は思いとどまる。

 のぶはてっきり家のためと思っていて、自分にも背負わせてほしいと言うのだが、それは勘違いだった。

「お姉ちゃんが思うようちゅうようにええ子やないがやき」と言う。

 好きな人に思いが届かないのならほかの誰と結婚しても何も変わらないと自棄になっていただけなのだ。つまりかなり浅慮だった。

 蘭子、一見、洞察力がありそうなのに、豪(細田佳央太)が無理して結婚を応援している気持ちには気づけていないようだ。あゝ悲しきすれ違い。

 そんな妹をやさしく抱きしめて、ようやく長女らしくなったのぶだった。

 そして、昭和11年(1936年)8月。ベルリンオリンピックが開催された。水泳選手の前畑秀子が日本の女性として初めてオリンピックで金メダルを獲得した。「前畑がんばれ」の実況が有名。女性の地位向上が進んでいたことがわかる出来事である。

 秋になると、あんなにめそめそしていたうさ子(志田彩良)がめきめきたくましくなっていた。黒井先生のようになると、のぶよりも心身共に強くなっている。休みのときも訓練していたのだ。たぶん、のぶはしょっちゅう御免与町に帰っていたに違いない。それにしたってうさ子、変わり過ぎ。

 そして、年が変わり、昭和12年。嵩は試験に挑む。京都と東京の2校を受験することになった。

 ヤムおんちゃん(阿部サダヲ)に合格あんぱんをもらって勇んで京都に出かけていったが、
結果は不合格。

 残るは東京。三度目の正直となるか。でも東京のほうが狭き門だった。