事例1:頼りないカウンセラーに「ベテランに替わって!」

 筆者はカウンセラーとして、官公庁や民間企業の従業員を対象に対面カウンセリングを行っています。カウンセラーになって間もない頃、一般企業などからメンタルヘルスを委託されている会社で電話カウンセリングを担当していました。

 この電話カウンセリングは、契約企業の従業員や家族であれば匿名で利用できるシステム(企業名は確認する)で、カウンセラー側も匿名で対応するというルールでした。匿名で電話をかけてきて、そのときちょうど電話を受けたカウンセラーが話を聞くわけですが、当時、経験が浅かった私は、毎回緊張気味に相談をお聞きしていました。

 自信のなさそうな私の声色や反応は、相手に名前を告げなくてもクライアント側に伝わっていたようで、複数の人から「あなた新人でしょう?ベテランの人に替わって!」とか、「まだ人生経験が浅そうなあなたに自分の悩みを話しても、分かるはずないでしょう」などと強い口調で言われることがありました。会社宛てに直接、同様の連絡が入ることもありました。

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 この事例を記事冒頭に書いたカスハラの定義に照らし合わせると、「これはカスハラではなくクレームだ」と考えられます。なぜなら、クライアントの要求内容が、企業の提供する商品・サービスの内容と関係がある(というより、提供するサービスそのもの)に関することだからです。実際、私が反対の立場(カウンセリングを受ける側)であったとしても、おそらく、不慣れそうな新人よりは、経験豊富なカウンセラーに相談したいと思ったことでしょう。

 正直なところ、私自身はクレームで傷ついたりもしましたが、一方でカウンセラーとしてキャリアを築くためには、経験を積んでより自信を持って対応できるようにならなければと思いました。クレームであるかどうかの判断ポイントの一つは、それを受けた側も納得できる内容かどうかということです。