その陰で人々の音楽趣向が分かれ、若者はミスチル、小室に熱狂するが、ある程度の年齢以上はミリオンヒットですら知らないという状況が起こった。これは個人が好きなものを自分のためだけに聴くようになった結果ゆえだ。演歌とて同様だった。若い世代にまで愛される歌が生まれないのだ。

 その中で老若男女通じ知られた演歌が生まれる。坂本冬美の『夜桜お七』。

 これは前の年、香西かおりが玉置浩二から提供された『無言坂』をヒットさせたように、大人と若者の架け橋的な楽曲づくりに挑み、成功したためだと言える。「夜桜~」は作詞を、当時若者にも人気だった気鋭の女流歌人、林あまりに依頼した作品だったのだ。

 この年の『紅白歌合戦』に『夢いちど』で初出場した香田晋は、審査員席にいた野球のイチローが「香田さんの歌が好きです」という一言で注目され、これを機にバラエティー番組などでも活躍するようになる。

 Jリーグに押され気味だったプロ野球全体に活気を取り戻したのが、イチロー選手の人気で、「イチロー効果」という言葉まで生まれた。

この年を彩ったその他のヒット曲
●『愛が生まれた日』藤谷美和子&大内義昭
●『あなただけ見つめてる』大黒摩季
●『言えないよ』郷ひろみ
●『がんばりましょう』SMAP
●『Get Along Together ―愛を贈りたいから―』山根康広
●『世界が終るまでは…』WANDS
●『Tomorrow never knows』Mr.Children
●『TRUE LOVE』藤井フミヤ
●『夏を抱きしめて』TUBE
●『春よ、来い』松任谷由実
●『花のワルツ』藤あや子
●『ひとり酒』伍代夏子
●『Boy Meets Girl』trf

1996年(平成8年=昭和71年)
小室ファミリーがチャートを席巻

 アトランタオリンピックが開かれ、東京国際展示場(東京ビッグサイト)が開業。「Yahoo!JAPAN」がサービスを始め、携帯電話が一般にも出回った年、“社会現象”として海外のニュースにまで取り上げられたのが「アムラー」。