このため外交安保政策を担当する米政府当局者でも、CIAや世界最大の盗聴機関、国家安全保障局(NSA)などの情報機関に問い合わせ、同時に会談後のロシア大統領府の対応に関する情報を参考に会話内容を類推するという奇妙な状態が続いている。
実は、トランプとプーチンの会話は面と向かった会談が5回、公開された電話会談は第1期の大統領就任から2019年1月初めまでで9回とされている。
2024年10月に発刊された同紙のボブ・ウッドワード記者の新著『戦争(War)』によると、トランプが2020年大統領選に落選して以後も、2人は電話で7回程度の会話を交わしており、2016年大統領選挙に当選以後の会話と会議の総回数は25回を超えているとみられる。
通訳官からノートを取り上げて
「誰にも口外してはならない」
トランプは会話の内容が公開されないよう極めて神経質になっていることが分かる。
第1回の会談となった2017年7月7日のドイツ・ハンブルクでは、トランプは会談後、通訳からノートを取り上げた上に、聞いたことは誰にも口外してはならないと命じたという。
そんな経緯にミュラー特別検察官(編集部注/ロバート・ミュラーは、2016年のアメリカ大統領選挙へのロシアによる介入を捜査した)も米議会民主党も関心を持ち、通訳官らに対してノートの提出を求める動きがあったが、現在はノートが存在するかどうかも明らかではない。
2018年7月16日、フィンランド・ヘルシンキでの公式の米露首脳会談は野党民主党の強い批判を浴びた。1対1で約2時間、通訳だけが同席したこの会談の終了後の記者会見で、トランプは2016年米大統領選挙へのロシアの介入について「プーチン大統領はロシアじゃないと言っている。ロシアである理由が見当たらない」とプーチンの主張を鵜呑みにする発言をした。
CIAは「プーチンが介入を指示した」とする判断をしており、米大統領が自国の情報機関を信頼せず、ロシア大統領を信頼するというおかしな現実が明からさまになった。