
“愛国少女”に染まりきれない
のぶの葛藤
蘭子の気持ちを思うと受けられないのだろうと、波多子(江口のりこ)とくら(浅田美代子)は想像する。それもごもっともで、豪が戦死したばかりで、いきなり縁談に浮かれるのもどうかと思う。でもそれは現代の感覚で、戦死者が増える分、子どもを生んで育てないといけないし、結婚出産が推奨されていたのだろう。「結婚十訓」とはそういう流れでできたものらしい。
愛国少女ののぶとしては、お国のために結婚をますます考えないといけないわけだが、そこまで愛国に徹することができない。やっぱり蘭子の哀しみに心を寄せてしまう。そこが人間である。
でもくらは、次郎は結太郎(加瀬亮)が連れてきてくれた人だと思って、ご縁を感じてならない。
豪も死んだいま、ずいぶん前に死んだ結太郎のことが思い出される。若い男手がいない朝田家に働き盛りの男性の存在が欲しい気持ちもわかる。のぶは嫁に行くので朝田家に男性が入るわけではないが、嫁に行った先で、新しい命を授かって、未来につながっていく希望はある。
残酷な話だがいまの朝田家は、老いた釜次しかいなくて、未来がない。老いた人も大事にしないといけないのは当然ながら、生き物の本能としては、新たな希望が作りたいと思うものなのだろう。
蘭子もわかっているから、「うちに気兼ねしないで」とのぶに言う。「うちのせいで行き遅れたら迷惑」とわざといやな言い方で。
どうするのぶ?
一方、嵩はうかうかしているとのぶが結婚してしまうと焦り、絵のスランプからも脱する。銀座で人々が楽しそうに過ごしている絵を描き、座間(山寺宏一)に「時代と逆行するようだな」とOKをもらう。さすが座間先生。自粛ムードにNOを突きつけるような嵩の絵を応援するのだ。
嵩はのぶに会いに行こうと考えている。
どうなる嵩?
すれ違いのはらはらを意図しているのはわかる。いまのところ、煮えきらず頼りない嵩より、芸術的感性もあり、仕事もできて、しっかりしていそうな次郎のほうがのぶに合っているように見える。
本日、「あさイチ」に中島歩が出演していたが、言動が不思議ちゃん(死語?)ぽくて、興味深かった。もしかして朝ドラの知性派路線より『不適切にもほどがある!』(TBS系 2024年)のおもしろ路線のほうが本質なのだろうか。