ベルランゴがカングーよりいいのは「助手席がフルフラットになること」?
F:と、話が横に飛びましたが、数字的にはカングーに勝っていると。
小:はい。セールスはベルランゴの方がいいと思います。ですが輸入車の数字にはたくさんの要素があります。クルマの良し悪しだけなく、たったいまどういう値引きをしているか、在庫状況はどうか、本国から安定供給されているか、というところもありますし。
そもそもベルランゴは5座と7座のふたつのボディタイプを持っている。カングーは現状5座しかない。こっちはバリエーションが多いのだから、その分数字が良くなるのは当たり前と考えるべきだと思っています。
F:なるほど。カングーは日本で5座のみ。ロングボディは売っていない。でも現地では7座もありますよね。
小:はい。欧州では7座のカングーも出しています。日本ではまだ出ていないですね。
F:5座・7座のボディバリエーションもそうですが、私は新しいカングーの助手席がフルフラットにならない設計が致命的だと思っています。前モデルでは助手席の背もたれが前に倒れてフルフラットになった。新型は椅子が立派になってそれができない。サーフボード等の長尺物を積めなくなった。これが大きいと思います。あれは直せないのかしら。
小:難しいと思います。大変な開発コストがかってしまう。日本という限られた市場のために、世界的にはマイナーな右ハンドル車専用のシートを起こすとなると尚の事。
F:なるほど。そう簡単には変えられない。するとベルランゴの地位は安泰ですね。
小:いやいやそうはいきません。カングーには熱狂的なファン層がある。
カングーを買うファン心理「カングージャンボリーに出たい」
小:カングーとベルランゴの根本的は違いは、「保有に依存しているかどうか」だと思っています。カングーのファンは、“カングーというクルマを持っているかどうか”が重要なんです。カングーに乗ってカングージャンボリーに出かけたい。自分のクルマを人に見てもらって、他のオーナーさんともつながりたい。そういう人が本当に多い。
F:毎年開催されるカングーの祭典カングージャンボリー。今年は生憎の雨だったと聞きましたが。
小:それでも多くの人が集まりました。今年は20回目の記念大会で、累計参加人数は2万人に達しました。誇張ではなく、「カングージャンボリーに出たいからカングーを買う」というお客様が少なからずいるんです。そしてカングーを保有している人の実に8%くらいが、ジャンボリーに参加しているんです。その人たちがしっかりと市場を支えている。そういう世界観なんです。カングーって。
F:なるほど。かように強靭なコア層がある。目先の数字では語れない世界があるわけですね。