小:シトロエン CEOのティエリー・コスカスと話すと、僕を見た瞬間に「ベルランゴの人」扱いするんですよ(苦笑)。つまりそれほど日本でベルランゴが多く売れている。

F:「ちょっとベルランゴさん……じゃなくて小川さん」ぐらいの(笑)?

小:いやぁ本当にそうです。シトロエンの本社からすると、僕は“ベルランゴの人”なんです。それほど旺盛な需要が日本にはあるということです。

ベルランゴは本社から「日本独自のマーケティングを展開してくれ」といわれている

F:乗用のベルランゴが売れるのは日本だけの特殊事情ですか。他にも同じような国はありますか?

小:我々は“アジアパシフィックリージョン”という枠に入っているのですが、その中で日本に近いところ、例えば台湾などは近い傾向があります。ですから彼らは積極的に日本のマーケティング手法を模倣しています。

F:なるほど。日本の好例に倣え、と。

小:はい。シトロエンに限らず、普通インポーターは全世界的に使える販売のアセットを使うものなのですが……。

F:それはそうですよね。国によってちょこちょこ変えたくない。

小:その通りです。「全世界、このブランドの世界観で流してください」とやるのが普通です。でもベルランゴだけは、そうした世界共通の“グローバル素体”がないんです。「日本は日本で独自のマーケティングを展開してくれ」というのがベルランゴです。

ベルランゴ、8~9割が新規顧客

F:日本ではどのような人が買っているのですか?乗り換え元は何ですか。

小:そこがこのクルマの面白いところで、顧客データを見ると新規のお客様ばかりです。「前に乗っていたクルマ」というアンケートを取るのですが、ものの見事にバラバラです。国産車あり、輸入車あり、他のシトロエンからの乗り換えあり。ベルランゴだけは、「このメーカーからの乗り換えが特に多い」というのがない。特に昨年9月のマイナーチェンジ以降にこの傾向が顕著です。8割、9割が新規のお客様です。

F:8割、9割が新規顧客!そんなに!ボディタイプでいうと、やはりミニバン系からの乗り換えが多いのでしょうか。

小:そこもバラバラです。ミニバンからもセダンからもSUVからも乗り換えておられます。顧客像としてはアウトドア志向の方。充実したユーティリティが欲しい方。日本のミニバンよりもよりアウトドア感、道具感を強く感じたい方。そんな方々が選択してくれています。