生成AIが、福沢諭吉「文明論之概略」についての文章を出力する

 実は、このPDFには一見してわからないような細工が施されていました。そのため、学生たちが資料を生成AIにアップロードして要約させると、授業では触れていない「文明論之概略」(福沢諭吉)についての文章が生成されるようになっていました。

 この授業を受講した学生が、大学からの通達をXにポストしたことから、大きな話題となりました。通達には、「文明論之概略」について書いたコメントは評価対象外にするとされており、「生成AIを利用する際には、まずはその仕組みをよく勉強し、使い方を十分に考え、その出力の正しさを必ず自分自身で批判的に吟味してください」と書かれていました。

 この手法については様々な観点から議論ができるかと思いますが、これほど生成AIが大学生の間に浸透しているという事実がわかると思います。

小中学生や高校生も、生成AIを使っている

 全国大学生活協同組合連合会が2025年2月に行った「第60回学生生活実態調査」によると、「生成系AIの利用経験あり」と回答した学生は、2023年46.7%でしたが2024年には68.2%と大幅に増加しているそうです。また、利用目的としては「授業や研究」(31.9%)、「論文・レポート作成の参考に」(29.7%)、「翻訳・外国語作文」(18.9%)、「遊び・興味」(18.8%)、「メールなどの文章作成」(11.6%)となっており、学業がメインとはいえ、生活の一部として活用している学生が多くいることがわかります。

 ある男子大学生に聞いたところ、就活のエントリーシート作成に生成AIを活用していると言っていました。エントリーシートでは企業ごとに文字数が定められているため、「ガクチカ」(「学生時代に力を入れたこと」の略語)を指定された文字数に調整するために使っているのだそうです。

 もちろん、大学生だけでなく、小中学生や高校生も生成AIを利用しています。NTTドコモ モバイル社会研究所の調査では、中学生の生成AI利用率は13.3%で、親の利用率9.0%を上回っていたそうです。調査によると、中学生の親子がともに利用しているのはわずか2%とのこと。親に教わったのではなく、自分で調べたり、友人から生成AIについて教わったりして使い始めているようです。

図表:「【小中学生】生成AIの利用率」「【小中学生】生成AIの利用率」(出所:NTTドコモ モバイル社会研究所) 拡大画像表示