これから羽ばたいてゆく女の子たちが、「女の子に生まれなければよかった」と思わずに、「自分でよかった」と思いながら暮らせますように。
そんな願いがこめられた書籍が発刊された。それが、『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)だ。
著者の犬山紙子氏は、娘を妊娠したことをきっかけに、現代社会の女性が抱えるさまざまな問題に向き合いはじめた。母娘関係、性教育、ジェンダー、SNSとの付き合い方、外見コンプレックス、いじめ、ダイエットなど、女の子を育てる時期に生まれる無限の「どうしよう」を起点に、10人の専門家取材を重ね、本書を書き上げた。
今回『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』の発刊を記念して、犬山氏にインタビューを行った。聞き手は、子ども向けに「自分の身を守る方法」を網羅的に紹介した児童書『いのちをまもる図鑑』の著者、滝乃みわこ氏。
(構成/ダイヤモンド社・金井弓子)

犬山紙子氏犬山紙子氏

「オンライングルーミング」から子どもを守るには

犬山紙子(以下、犬山):SNSの性被害、特にオンライングルーミング(インターネットを通じて親しくなり、相手の信頼を得る行為のこと。仲良くなったあとで、性的な接触を求められることがある)って本当に怖いですよね。ネット上の相手の本質を見抜くなんて、大人でも難しいのに。

滝乃みわこ(以下、滝乃):本当にそうですよね。『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』の中で触れられていた、NHK「クローズアップ現代」の「追跡・SNS性犯罪~ネット上で狙われる子どもたち」特集はわたしも見ました。SNS上に架空の中学3年生の女の子のアカウントを作成し「友達がほしい」とつぶやいたところ、わずか2分で12人からメッセージがきて、その内容が卑猥な写真やメッセージだったという内容でしたね。

犬山:やばい話ですよね、本当に。そして知り合いの男性に「クローズアップ現代」の感想を話したら、最初は「それはひどいな」と共感してくれたように見えたんです。でも次の瞬間、「男を騙したってことですよね?」って言われて………。

滝乃:え? って思いますね。

犬山:取材班が「子どもだと偽った」ということを問題視しているみたいで。でも、本質的な問題はそこじゃない。子どもは守るべき存在だという視点が全くないことにびっくりしました。

滝乃:女の子だけでなく、男の子も被害に遭う可能性があるのに、そういう意識すらない人もいますよね。

犬山:だからこそ、オンライングルーミングの手口や危険性を、親がしっかり知って子どもに伝える必要があると思います。

滝乃:「危ない人がいるから気をつけて」って言うだけじゃ不十分ですよね。具体的な手口を知らないと、子ども自身が気づけない。

犬山:そうなんです。『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』の中では、ITジャーナリストの鈴木朋子先生から「加害者は子どもを肯定して、気持ちを分かってくれる優しい大人を装う」ことや、「同世代の女の子を装うケースが多い」といった具体的な話を聞きました。そういう人たちを、子どもは「やばい人」だなんて思わないんですよね。

滝乃:それを子どもに伝えるのは切ない話ですけど、大事なことですね。

スマホとの付き合い方は、子どもも大人も難しい

滝乃:スマホを持たせるタイミングは、何歳くらいで考えていますか?

犬山:今のところ、まだ持たせていません。スマホってキッズケータイとほとんど価格が変わらないので選択肢にはあがってくるんですが。娘は中学に入ったらスマホが欲しいって言ってるんですが、主に連絡ツールとしてLINEを使いたいという理由みたいです。多分娘の親しい友達が多く持つようになったら渡すことになると思いますが、そのタイミングでルールや、グルーミングの危険性について徹底的に話すつもりです。

滝乃:アダルトサイトなどへのアクセスは、フィルタリングをかけても抜け道があるって聞くので心配ですよね。

犬山:そうなんです。フィルタリングをしても、例えばLINEのリンクから外部サイトに飛べてしまったり、いろんな裏技があるので、完全には防げません。だから性被害を防ぐためのアプリを入れたり、親子で話し合う機会を増やしていくことも重要だと思っています。