世界の金融機関のサブプライム関連商品の損失額が全貌を見せつつある。だいたいの損失規模はなんとなくわかってきた。相場の世界では、悪材料はお化けと一緒で、すべてが見えると怖くないものと決まっている。市場参加者の認識が実際の損失額に追いついてくると、株価もそれに応じて変化しているはずだから、金融機関の損失額が怖いということは、そうない。
まして、日本の金融機関の場合、報道ベースでサブプライム関連商品の保有額はすべて合わせて1兆数千億円だ。銀行のバランスシートは割合きれいになっているし、その後の景気回復で少々稼いだ。サブプライム関連の損失で大手金融機関の経営が曲がるとか、かつての「貸し渋り」が復活するということはないだろう。
もちろん、サブプライム層の保有不動産に限らない米国の不動産価格下落が、今後どれだけ世界の景気に影響を与えるかは不透明だ。サブプライム問題の第2ラウンドとでも呼ぶべき段階だが、この影響がどうなるのかは、今の時点ではよくわからない。ただ、目下のFFレートの誘導目標である4.5%を下回って4%そこそこに低下した米国の10年国債利回りを思うと、金融市場の参加者は、米国の景気にかなり悲観的な見通しを持っている。目下の日本の株価はもっぱら景気のみに反応しており、まだ警戒が必要だ。
サブプライム商品に、直接ないしは傘下の投資会社やヘッジファンドを通じて多額の投資を行なっていた欧米の金融機関は、サブプライム商品に関する他社の評価替えや、格付け会社による格付けの引き下げに応じて関係商品の評価を引き下げては、損失額予想の拡大を余儀なくされている。