たとえば東名高速の東京ICから山陽道の広島ICまで普通車で走行する場合、ETCでの通常の通行料金は1万6940円です。しかし東京ICに午前3時50分に流入すれば(高速道路への流入を判定する東京本線料金所を午前4時前に通過すれば)、走行の全区間にわたって3割引が適用となり、通行料金は1万1860円と、5000円以上も安くなります。
こうした“節約術”は、一般のドライバーにも多く活用されていましたが、やはり利用の主役となったのは、運送業に従事する職業ドライバーでした。大型車はそもそも普通車よりも通行料金が高く設定されていること、また長距離を恒常的に移動することから、その効果はより大きくなるからです。
深夜の高速道路で起きる異常な光景
しかしこの節約術に起因する現象が、大きな問題としてクローズアップされることになります。それは午前0時前に頻発する、高速道路本線上での車両の滞留です。
スムーズに走れば出口料金所の通過が午前0時より前となる状況で、あえて時間調整して午前0時を待って料金所を通過し、深夜割引の適用を受けようというドライバーが多く現れたのです。
たとえば東名高速では、午後11時40分くらいから上り線の東京料金所手前の路肩に停車するトラックが現れ、時間の経過とともに、路肩は徐々に縦列駐車で埋まっていきます。そして午前0時が近づくと、路肩の停車は二重、三重になり、最終的には三車線ある本線までがすべて「午前0時を待つトラック」で埋まってしまう、異様な光景となります。この状況が、毎晩繰り返されているのです。
もちろん、トラックのドライバーも「できればSAやPAに駐車して時間を使い、午前0時を待ちたい」という思いのはずです。
しかし東京料金所のすぐ手前にある上り線の港北PAには大型車の駐車スペースは20台程度で、多数のトラックが停まる余裕はありません。その手前にはより規模の大きな海老名SAがありますが、東京料金所までは30kmほどの距離がある上、こちらも午後10時を過ぎると時間調整のトラックで混雑することが常態化しています。