
合意された基礎年金底上げ
高まる会社員の不満
石破茂首相は5月27日、公明党の斉藤鉄夫代表と立憲民主党の野田佳彦代表と国会内で会談し、年金制度改革関連法案に基礎年金の底上げ策を盛り込む修正案に正式合意した。
基礎年金の底上げ策とは、国民年金(基礎年金)の将来的な給付水準の低下を抑制するため、厚生年金積立金を流用することで給付額を調整する施策だ。将来世代の基礎年金給付水準はマクロ経済スライドの影響により3割程度減少すると見込まれているため、底上げ策によって基礎年金の給付水準の低下を抑制し、将来の受給世代、特に就職氷河期世代以降の年金不安を軽減する効果が期待されている。
しかし、この底上げ策は、主に会社員が支払ってきた厚生年金の積立金を“流用”するため、厚生年金加入者の年金保険料負担の増加や、将来の厚生年金受給額が目減りする可能性が指摘されている。厚生年金の加入者から見れば、自身が積み立てた年金の原資が、国民年金加入者(基礎年金のみの受給者)の給付に回されることに対して不満が出るのは当然だろう。
また少子高齢化が進む中で、年金財政は全体として厳しさを増しており、安易な積立金の切り崩しは根本的な解決ではなく、問題の先送りに過ぎないという批判もある。積立金は将来の給付のために積み立てられたものであるが、その取り崩しは一時的な措置に終わり、抜本的な財政再建策がなければ、数年後に再び同じ議論が生じる可能性もある。
今回の3党合意は、現役世代の負担拡大懸念を高めて政党支持率を動かす一因となると予想される。そしてその思惑から、金融市場を揺るがすことになるだろう。次ページでは、予想外の年金改革法案の合意がもたらす波紋と、株・為替・債券市場への影響を展望する。