使い込みを目論むような悪意のある者は少数派だとしても、総じてリゾートマンションにおいては、解体も視野に含めた長期的な視点に乏しいという指摘がある。

 確かに日本のほとんどのリゾート地における築古のマンションの市場価格を考えれば、建て替えを行うメリットは乏しい。建て替えを目指さないのであれば、やがては老朽化を迎えた際に解体を行わざるを得ないのだが、マンションの建て替えが行われた事例は時折目にするものの、解体されて消滅した事例はいまだほとんど存在していない。

苗場で最も古いマンションが
解体されるまでの長い道のり

 全国的にも珍しいマンションの解体事例の1つが「マンション苗場」である。

 マンション苗場は、かつて苗場に存在したリゾートマンションで、2018年に区分所有者全員の合意を経て解体された。当時、朝日新聞(2019年5月10日付)でも報じられておりリゾートマンションの枠を超えた極めて先進的な事例であると僕は思うのだが、珍しさの割にあまり知られていないようだ。

 マンション苗場は、元々は「サンライズ苗場」の名称で1975年に分譲販売された、苗場で最も古い分譲マンションの1つであった。

 合計で9棟にも及ぶ西武不動産の「西武ヴィラ苗場」の販売が始まるのはその2年後の77年なので、当時の苗場においては非常に先進的な存在だった。

 しかし、その後バブルの到来を経て、次々と豪華な共用設備を誇るマンションが近隣に立ち並ぶにつれ、全31戸の小規模な「マンション苗場」はいつしかほとんどの部屋が使われず放置されるようになり、管理費や修繕積立金の滞納も常態化。苗場そのものが観光地としての競争力を失っていく中、マンション苗場は廃墟化の道を静かに歩んでいた。

 管理組合も事実上機能が停止していたが、当時の区分所有者の1人がマンションの行く末に危機感を抱いて、地元の不動産会社と協力して解体への道を模索。合意を取り付けるために所有者の調査を始めるも、幾人かは所在が不明となっており、登記簿上に記載された住所の周辺住民に聞き込みを続けるなど、5年にも及ぶ執念の追跡を行ったという。

 結果、ついに解体に成功し、解体後のマンション跡地は近隣の事業者に売却されている。