さすがにそのマンションの所在地をここで明かすわけにはいかないが、1970年代末に建築されたそのマンションは、ざっと外観や各居室の玄関、窓などの模様を見る限り、おそらく9割以上の居室が長期間利用されていないであろう様相だ。
にもかかわらず、今なおわずかに残る利用者と管理人が、ほとんどDIYに近いような修繕を繰り返している。
しばらく前までその管理人は、マンションの修繕模様を写真付きでブログで公開し続けていた。マンションの管理手法としては極めて異例なものとはいえ、関係者以外の目に触れることもないので細々と更新され続けており、僕も興味を覚えてときどき見ていた。

吉川祐介 著
あるとき、記事のコメント欄に、おそらくそのマンションの区分所有者と思われる方より、このブログ主の管理人は区分所有者の合意を得ることもなく勝手な修繕を繰り返しており、その模様を公開するのは問題だ、との苦言が書き込まれていた。
ブログで公開されている修繕の状況を見ても、先ほど記したようにDIYのレベルであり、そうした工事が区分所有者の合意や決議を経て行われているとは考えられない。
おそらくその管理者が必要に応じて自らの判断で修繕しているのだろう。それ自体は外部の人間がとやかく言うような話ではないかもしれないが、こうした動きが一般のマンションにも広がる可能性がもしあるとすれば、戦慄を覚えると言っても言い過ぎではないだろう。
そのマンションは低層建築なので個人レベルの修繕工事で何とかなっているのかもしれないが、これが10~20階建てにもなる高層マンションであったなら、DIYでの修繕など到底不可能だからだ。