「仕事ができる」という評価は
二階建て構造になっている

 ただし、「仕事ができる」ことの内実は、「二階建て」になっているという点は押さえておかなくてはなりません。一階部分には、ある程度どんな時代や業界、職種においても普遍的に必要とされる基礎的な特性があります。そして二階部分には、特定の仕事や業界、時代によって求められる、より具体的で個別のスキルがあるのです。

 つまり、「優秀さ」というのは全部が全部完全に相対的なものではなく、ある程度共通する部分もあるということです。二階部分によって、「この人は優秀だ」と評価される要素は変わるため、一階と二階を足した全体として、ある場所、ある時代に仕事ができる人が、別の場所でも活躍できるとは限らないということになるのです。

 では、その一階の基礎的な部分—どんな時代や職種でも必要とされる「コアスキル」とはどういうものなのでしょうか。私はこれまでの経験と研究から「コアスキル」は主に4つあると考えています。

1. 自己認知
2. 当たり前水準
3. 意味づけ力
4. 自己効力感

 1の「自己認知」は自分自身のことをできるだけ正確に理解する能力のことです。メタ認知、自己理解とも呼ばれることがあります。自己認知は他の多くの能力の土台となる部分で、自分は何が得意で何が不得意か、何をやりたくて何をやりたくないのかを正確に把握することです。

 2の「当たり前水準」は「どこまでやったら頑張ったと言えるか」という基準のことです。人によって努力や成果のレベルに対する感覚は異なりますが、当たり前水準が高い人は、他の人なら「十分頑張った」と満足するレベルでも「まだまだ足りない」と感じ、さらに努力を重ねます。

 3の「意味づけ力」は、目の前の仕事や課題に意味を見出す能力です。最近では「ジョブ・クラフティング」という言葉で表現されることもありますが、自分の仕事が会社にとってどんな意味があるのか、そして自分自身にとってどんな意味があるのかを考える力です。特にマネージャーにとっては、部下に対して仕事の意味を伝える力も重要になります。

 4の「自己効力感」は、これまでやったことのないことに対しても自分はできるだろうと信じられる力のことです。これは単なる楽観主義ではなく、実際の経験や成功体験に基づいた、いままでこのようなことをやり遂げてきたのだから、もっと困難な事柄であっても「自分ならできる」という確かな自信です。

 これらのコアスキルは生まれつき持っているかどうかだけでなく、訓練や経験によって高めることができます。「仕事ができない」と思われている人も、これらのコアスキルを意識的に高めていくことで、「仕事ができる人」に変わることができるのです。