バブル遺産「夢空間」
バブル遺産「夢空間」 Photo:PIXTA
懐かしすぎて泣きそう…昭和・平成の懐かしい寝台列車6選【写真多数】東急百貨店が手がけたダイニングカー。個室まであった Photo:PIXTA

「カシオペア」や「四季島」につなげた
走るバブル遺産「夢空間」

 続いて紹介するのは1989年に登場した「夢空間」だ。「オリエント・エクスプレス’88」に影響を受けたJR東日本が、次世代の夜行列車を開発しようとラウンジカー・寝台車・ダイニングカーの3両を試験的に作成。89年の横浜博覧会で展示した後、臨時の「北斗星」などに併結して運行を開始した。

 この3両は、百貨店3社が内装を手がけたのも特徴だ。ラウンジカーは松屋が、寝台車は高島屋が、ダイニングカーは東急百貨店が担当した。特に寝台車は全室バスタブ付きで高級ホテル並みだった。なお、現在バスタブのある列車は、クルーズ列車の最上級クラス「TRAN SUITE 四季島」と「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の最上級客室にしか存在しない。

 ラウンジカーには全自動で演奏するライトアップピアノが置かれ、ダイニングカーは展望個室でフランス料理のフルコースを楽しむことができた。まさに豪華絢爛バブリーな3両だったといえるだろう。年間に数回しか乗れるチャンスはなく、切符はプラチナチケットだった。

「夢空間」は老朽化により2008年に廃車されたが、「オリエント・エクスプレス’88」から引き継がれたクルーズ列車の思想は、その後E26系「カシオペア」に継承され、現代の「TRAN SUITE 四季島」へと受け注がれていることがよく分かる。

 この3両は、その豪勢な空間を今に伝えている。寝台車は、東京都江東区にあるフランス料理店のラウンジスペースとして活用され人気だ。ラウンジカーとダイニングカーは商業施設で展示された後、現在は清瀬市中央公園にて修復作業が行われている。失われたパーツまで含めて運行当時の状況を再現するそうなので、公開を楽しみにしよう(26年2月予定)。

寝台特急「トワイライトエクスプレス」寝台特急「トワイライトエクスプレス」 Photo:PIXTA

大阪~札幌間1508.5kmでJR史上最長
「トワイライトエクスプレス」

 最後に紹介するのは、1989年に運転開始の寝台特急「トワイライトエクスプレス」だ。大阪から札幌までの営業距離は、実に1508.5km。前述した「富士」に迫り、民営化後のJRで史上最長の列車だ。下りは昼12時頃に大阪を出発して翌日10時頃に札幌着、上りは札幌を14時頃に出発して翌日13時頃に大阪着するなど、もはや寝台特急と呼んでいいのかも分からないくらい長く走る列車だった。

 食堂車やロビーカーも含めた全車両の設備は豪華でシャワー室も完備し、時間を忘れて快適に過ごすことができたと言えるだろう。中でも1号車に設けられたスイートルームは鉄道ファンの憧れ。リビングと寝室が別の広々とした空間に、前面展望の大きな窓は、唯一無二の仕様だ。予約も困難で、乗れたら幸運そのものだった。

 そんな超人気列車も、2015年の北海道新幹線開業により青函トンネルを通れなくなったこともあり、札幌への運転を取りやめた。以後は西日本各地を巡行するクルーズ列車になったが、車両の老朽化により16年3月に引退。その名前と思想はJR西日本が17年に運転を開始したクルーズ列車「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」に引き継がれている。

 読者の皆さんも、思い出のある寝台特急があれば教えて欲しい。個室のベッドで眠ったり、食堂車で車窓を楽しみながら移動できる寝台特急列車は、他の交通手段にはない魅力にあふれている。筆者は、多くの路線で復活して欲しいと願うばかりだ。

懐かしすぎて泣きそう…昭和・平成の懐かしい寝台列車6選【写真多数】鉄道ファンの憧れ、1号車の展望新台個室「スイート」 Photo:PIXTA
懐かしすぎて泣きそう…昭和・平成の懐かしい寝台列車6選【写真多数】トワイライトエクスプレスの食堂車「ダイナープレヤデス」。その名前は現在の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」に引き継がれている Photo:PIXTA