改めて、日本人のよさとは何か?

徳重 グローバルに活躍できる起業家は現状少ないですが、日本人は本来とても優秀なんです。信頼できるし、協調性がある。チームで仕事もできる。アジアでもどこでも向こうの人は日本の製品が好きだし、買いたいと思っている。

 日本人のことも大好きです。僕の会社が海外で評価されたのは、日本の会社だということがとても大きい。それは先人たちが開拓してくださった功績のおかげです。

 ですが、今の日本人にはチャレンジ精神やコミットメント、アグレッシブさなど、世界に挑むときに非常に重要なものがまったく欠けています。

グローバルに活躍できる人財・企業になるために<br />経営者、組織を率いるリーダーが<br />身につけておくべきこと 新 将命(あたらし・まさみ)
1936年生まれ。早稲田大学卒業後、シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスを含むグローバル・エクセレント・カンパニー6社で40年にわたり社長職を3社副社長職を1社経験。2003年より住友商事を含む数社のアドバイザリー・ボードメンバーを務める。長年の経験と実績をベースに、経営者や経営幹部を対象とした経営とリーダーシップに関する講演・セミナーをし、国内外で「リーダー人財開発」の使命に取り組む一方で、経営者・経営者グループに対する経営指導、相談役も果たしている。自身のビジネス人生で得た実質的に役立つ独自の経営論・リーダーシップ論は経営者や次世代リーダーの心を鼓舞させ、講演会には常に多くの聴講者が詰め掛けている。
著書に『経営の教科書』(ダイヤモンド社)『伝説の外資トップが説く リーダーの教科書』(ダイヤモンド社)、『伝説の外資トップが説く 働き方の教科書』(ダイヤモンド社)、『コミュニケーションの教科書』(講談社)など。またオリジナル教材『経営・リーダーシップ実学』やCD教材等も。
新将命 公式サイト

 日本人は「そこを何とか…」と言うけれど、英語に「そこを何とか…」という意味を持つ単語なんてありませんからね。要するに、日本は「察する美学」なんですよ。

 一方、アメリカなどは「自己主張の力学」。「察する美学」と「自己主張の力学」が同じ土俵で相撲をとったら、当然自己主張の力学が勝ちますよね。

 グローバルに活躍したいと思うなら、自分の意見をはっきり言うこと、つまりスピークアウトできなければ難しい。

徳重 そうですね。ただ僕が思うのは、新さんはもちろんご存じだと思うのですが、30年ほど前の日本人は1人でアメリカや南米などをめぐりながら、粘り強く海外市場を開拓してきましたよね。

 今の駐在員の多くがそうしないだけで、昔の日本人は危機意識と変化意識を持って、未来を切り開いていくだけのハングリー精神を持っていた。だから、日本人ができないわけではなく、今のやり方が間違っていると思っているんです。

 以前は、現場の誰もが当事者意識を持ち、果敢にチャレンジしていましたよ。

徳重 僕の好きな小説『坂の上の雲』の時代の人たちにもあったハングリー精神、当事者意識が今はとても希薄になっている。世界の状況を見て、日本は先を越されてしまったのだという危機意識を持ってほしい。少なくとも僕は負けていると思ったし、負けているならば後は這い上がるだけ。先人たちと同じように戦えばいいだけです。