テクニックではなく、思いが物事を動かす

 日本人は戦後復興して豊かになりました。食うことに困る人、ハングリーな人が少なくなった。ハングリーでなければハングリー精神は生まれませんよ。

 ではその中でどうやってハングリー精神を培うのかというと、やはり大義を掲げることだと思いますよね。ミッション、使命感、こうなりたいと思う理想。それら理念(クレード)を語らない経営者が日本には多すぎる。

徳重 大企業もさることながら、私たちベンチャー企業こそ理念ありきでしょう。

 僕自身も「日本初の世界的ベンチャー企業の創造」を掲げて起業したわけですが、大企業だと社員全員が優秀でなくても仕事はある程度回ります。

 しかしベンチャーの場合は、人材も乏しくインフラも不十分という状況でスタートするので、毎日のように問題が起こるし、それに立ち向かわなければいけません。無数の問題を克服していくには相当強い思いがなければ無理ですし、社員全員での共有がなければ乗り越えていけません。

 たしかにそうですね。これからグローバル化が進めば進むほど、会社は多様化していきます。取引先だけではありません。社員も日本人のみとは限らず、人種も違う、文化も違う、肌の色も違う社員をまとめていくためには共通認識としての理念が必要で、これは会社の規模に関係なく重要なことでしょう。

徳重 だからこそ、本気で思ってもいないビジョンは掲げるべきではないですね。社長が本気かどうか、社員はすぐに見破ります。自分が何を大切にし、今の社会では何が問題で、自分ならどう解決するのかを日々考えて蓄積されたものの中からビジョンは出てくるのであって、そもそもビジョンはそんなに簡単に定まるものではありませんよ。

 最近のビジネス書には、テクニックばかり書かれているように思えます。それよりも思いや情熱が勝ることは多分にあるのに。

 まさにコミットメントですね。どんなにテクニックがあっても「死ぬ気でやってやる!」という気持ちがなければ何をやってもダメでしょう。