「ほめる」とは、根拠のある承認をすることです。

「4月に入社したときよりも、報告書のまとめ方がうまくなった」
「この頃、会議での発言が的を射るようになった」

 など、過去と比べてどこがよくなったかを指摘する。人と比べるのではなく、本人の過去からの成長を承認する。そのためには、部下を日頃から「よく見ている」ことが大切になります。

「私のことを見ていてくれる」という思いが若手にあれば、ほめることはもちろん、叱ることも難しくありません。「よく見ている」前提の上に、「ほめる」「叱る」は成り立つのです。

ハラスメントの基準を把握している若手と
雰囲気でビクビクしている上司世代

 入社から3年を過ぎた大学の教え子と「パワハラ、セクハラ」についての話をよくします。彼女たちは声を揃えて、「こう言うとパワハラになっちゃうけどさ」と前置きして「パワハラ発言」をする上司の多いことを嘆きます。

 彼女たちは、何でもかんでも「パワハラ、セクハラ」と言っているわけではありません。「会社の研修で、パワハラ、セクハラと感じた時は、躊躇(ちゅうちょ)せずに声に出すこと」と教えられている。きちんとした知識を持って、「それ、パワハラに当たりませんか?」と素直に聞いているというのです。

「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」が施行されたのは2020年6月。ちょうどパンデミックの最中で、誰もが外出できないときでした。

 その後、上の世代は元の職場に戻りましたが、この年代以降に入社した若手社員たちは、この法律に則って、「パワハラ・セクハラ研修」を受けています。これを受けた世代と知らずに会社で過ごしている世代の価値観の違いが激しいのです。過去には「当たり前」あるいは、水に流していたことが、社会を揺るがす大問題に発展するケースもあります。

 そんな中で上司世代におすすめしたいのは、厚生労働省の「職場におけるハラスメント対策パンフレット」(2024年11月)に目を通し、どんな行為が訴えられるハラスメントになるかをしっかり把握しておくこと。

「ハラスメントと言われるのが怖い」ならば、その「ハラスメント」について学んでおくべきでしょう。