心の土台・基本的信頼感が育たないと、将来どうなる?

 基本的信頼感は、すべての心の土台となるもので、生涯にわたってずっと影響してきます。有名な心理学者であるエリクソンの心の発達理論によると、「基本的信頼感」の逆は「不信感」です。恐ろしいことに、1歳くらいで信頼関係がつくれる子と、人を疑う子ができてしまうのです。

「人は自分を助けてくれる存在なんだ」「人って信頼できるものなんだ」「自分は大切な存在なんだ」……この基本的信頼感が育まれていないと、大人になっても「人は信用できないもの」になります。しかも、他人を信じられないだけでなく、自分さえも信用できなくなってしまうのです。

「基本的信頼感」がなければ、人間関係をうまく築くことはできなくなります。何かあると「相手が悪い」と人のせいにしたり、自分から関係を絶っていったり。常に相手を疑ってみるため、人間関係がうまくいかなくなるのも当然でしょう。

 なぜそうなるかと言うと、私たちは生存本能として自分を守らなくてはいけませんから、危機が迫ったときには防衛反応が働くのです。

 次の3つの反応をすることが心理学でわかっています。(1)自分を守るために相手を攻撃する、(2)相手から逃げる、(3)死んだふりをする、フリーズして身動きが取れないために「なかったことにする」ということですね。

 たとえば、結婚・離婚を繰り返したり、転職を繰り返したりするのも防衛反応のひとつの表れです(もちろん、離婚や転職を繰り返すすべての人がそうだというわけではありません)。

 極端な例ですが、夫のことを信頼できず、「夫が自分を裏切ろうとしている」と疑うと、「それなら私のほうが先に裏切ろう」と考えて行動をする人もいます。裏切られそうだから先に裏切る、という飛躍した行動に見えますが、これも自分を守るため。自分が傷つかないように防御するためであり、本人にとっては正当性があることなのです。職場も同じです。「この職場にいても私にとって不利なことばかり起きる。こんな職場は辞めてしまおう」と転職を繰り返すのです。

 言い方が厳しいかもしれませんが、人を信頼できなければ、相手や職場が変わっても、同じことが繰り返されるだけです。“自分を信じられて人を信じられる自分”に変わって初めて、周りも変わっていきます。