父親の精神的虐待から逃れるため、アメリカに渡ったマスク

マスクのこれまでの人生について簡単に振り返っておこう。

南アフリカで生まれたマスクは、父の精神的虐待から逃れるためにアメリカへ渡った。

「アメリカはすごいことを可能にする国だ」――当時から「すごいこと」のテーマを「インターネット」「クリーン・エネルギー」「宇宙」の3つに定めていた。

インターネット黎明期の1995年に情報サービスのZip2を起業。

これを売却して得た資金を元手にオンライン金融サービスのX.com(後のペイパル)の共同設立者になる。

当然のように他の創業メンバーと対立。追い出されたマスクは宇宙輸送ロケットのスペースXを起業し、CEOに就任。

2004年には前年に設立されたテスラモーターズに出資する。

リスクを小さくではなく、リスクを大きくする

誤解されがちだが、マスクはテスラの創業者ではない。彼はエジソンのような発明家ではない。普通の意味での経営者でもない。その本質は起業家ですらない。

起業家は実のところリスクを取るタイプではない。ペイパルのピーター・ティールのようなプロの企業家は、成功のためにリスクを最小化ようとする。

ところが、マスクはリスクを大きくしようとする。

船に自ら火をつけて逃げ道を遮断する。持っているものをオールインして賭け続ける。

その中で当たったのがスペースXとテスラだった。

起業家ではなく、「冒険家」

マスクの正体は「冒険家」だ。誰もが不可能と思うことにチャレンジする。

リスクを欲し、リスクに溺れる。生か死かという状況でないと元気が出ない。

衝動的野心に突き動かされて、無理難題に挑戦するプロセスにしか精神の昂揚を感じない。

あっさり言って、経営には向いていない。経営者としてはもちろん、起業家としてもまったく参考にならない。