また、近年定番化しているハンディファンを使った暑さ対策も「工夫が必要」と、伊藤氏。
「猛暑の中では熱風を浴び続けることになるので、あまり効果がない印象です。冷風が出るハンディファンを選んだり、冷たいボディシートと併用したりすると体温が下がりやすくなります。また、汗を拭くときは乾いたハンカチやタオルよりも、一度水で濡らしたものを使いましょう。体を冷やすだけでなく、皮膚に残った水分が気化熱の発生を促します。乾いたタオルで汗を拭いた場合、皮膚に気化熱が発生しにくくなり、体に熱がこもってしまい逆効果です」
タオルを濡らすのに抵抗がある場合は、ウェットシートやボディシートの使用が便利だ。
「屋外で熱中症リスクを感じたときは、コンビニやスーパーで売られている『氷』を活用する方法もあります。袋やカップ入りの氷を買って、そのまま首元の太い血管を冷やしたり、タオルに氷を入れて首に巻いたりするのもおすすめです。氷が溶けたあとは、その水でタオルを濡らして首に巻くのも良いでしょう。体を冷やすものがないときの対処法として覚えておくと安心です」
外回りが多い日など、熱中症が心配なときはこれらの対策で予防に努めよう。
熱中症の危険サインと
救急車を呼ぶタイミング
気づかぬうちに熱中症になっていた場合は、迷わず医療機関を受診してほしい、と伊藤氏は話す。
「熱中症の初期症状は、脱水による『めまい』や『ふらつき』です。その後、筋肉痛や嘔吐(おうと)などに襲われ、だんだんと動けなくなります。足腰に力が入らないといった症状があらわれたら、すぐに救急車を呼んで問題ありません。真夏になる頃には、ある程度の暑さに耐えられる“暑熱順化”をしますが、油断は禁物。しっかり食事を摂って水分と塩分を補給し、そして無理をしすぎないように注意しましょう」
梅雨はもちろん、年々過酷さを増す夏を乗り切るには、熱中症対策のアップデートが必須。今日から取り入れてみよう。
伊藤敏孝氏:新百合ヶ丘総合病院 救急センター センター長
救急医学のエキスパート。救急医。外科医。防衛医科大学卒業後、横浜市みなと赤十字病院救急部・部長を経て現職。「救急車を断らない」を理念に掲げ、地域医療に貢献している。メディア出演も多数。TV番組で熱中症に関するコメントを行うなど、メディアでの熱中症対策の啓蒙・啓発も積極的に行っている。