話をする母娘写真はイメージです Photo:PIXTA

子どもの話に耳を傾けているつもり。それでも親の何気ないひと言が、子どもの口を閉ざしてしまうことがある。「正しいこと」よりも、「わかってほしい」が先にあるのが子どもの心。その“サイン”をどう受け取るかで、関係は少しずつ変わっていく。そこに、“わかってくれる大人”への第一歩があるのかもしれない。※本稿は、宮口幸治、田中繁富『「頑張れない」子をどう導くか――社会につながる学びのための見通し、目的、使命感』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

子どもの話を聞いてるつもりで
本当の意味では“聞いていない”

 これはみなさんにもよくあり、「あ、私のことだ」と思い当たるケースも多いかと思います。

 たとえば子どもが学校での嫌な出来事を話している場面で、親としては最初に同意して「それは辛かったね」などと共感の言葉を発し、いったんは子どもの気持ちを受け止めるのですが、でもその後すぐに決まって「でもね。それはあなたにも問題があるのでは?」などつい自分の意見を言ってしまうのです。

 子どもを支援する上で「子どもの話をよく聞いてあげる」というのはよく言われていることですが、実は、大人は子どもの話を聞いてあげているつもりでも、つい説教したり、叱ったり、自分の考えを押し付けたりしてしまい、本当の意味で聞いてあげていないことも多いのです。

 その結果、子どもは聞いてもらって元気をもらうどころか、話したことを後悔し、逆に心を閉ざしてしまうことにもつながります。子どもは意見を求めているのではありません。子どもは、アドバイスでなく自分の感情を理解し寄り添ってもらえることを欲しているのです。

 もちろん子どもの話には自分勝手であったり、未熟な内容に聞こえたりすることが多々あり、大人としてはどうしても「でもね、それは……」と言いたくなる気持ちがあります。しかしそこはあえてその気持ちを抑えて、すぐには自分の考えやアドバイスを伝えないでおきましょう。