『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』という本が、今注目を集めている。手の付けられない乱暴な子に育った著者が、思春期におじいちゃんに教わった「人生の教訓」をつづった一冊だ。実は、この「おじいちゃん」とは、かの有名なガンジーのことなのだ。12歳だった孫の人生を変えたガンジーの教えとは何か。 今回は、ガンジーとその母のエピソードから「子供との向き合い方」について触れた一節を紹介する。

親が子供に無意識に与える“最強の影響”ベスト1→「言葉がけ」よりも大切なこととは?Photo: Adobe Stock

「5歳のガンジー」と「母」のエピソード

バプジ(インドで「祖父」を意味する言葉。ここではガンジーを指す)は、誰もが驚くような強い意志の持ち主だった。バプジが、意志の強さを初めて目の当たりにしたのは、まだ5歳にもなっていないときのことだ。

バプジの母親は敬虔(けいけん)なヒンドゥー教徒で、「誓いを立てる」という習慣を守っていた。誓いを立てるとは、たいていある一定期間、何かをあきらめることを意味する。バプジがまだ小さいときに、バプジの母親は「太陽を見るまで何も食べない」という誓いを立てた。

普通であれば、これはたいした問題にならないだろう。しかし、誓いを立てたのはちょうどモンスーンの季節だった。

バプジから聞いた話では、太陽が何日も続けて黒い雲に隠れていたとき、母親は楽しそうに家族の食事を作り、一緒に食卓を囲んでいたが、一口も食べなかったという。母親が苦しい思いをするのを見て、幼いバプジの胸は痛んだ。おそらくそれが、バプジが経験した最初の共感だったのだろう。

ある日の午後、バプジは窓辺に座り、早く太陽が出ますようにと祈っていた。すると突然、雲間から一筋の光が差した。バプジは興奮して母親を呼びに行った。

しかし、母親が用事を終えて窓のところに来るころには、太陽はまた厚い雲に隠れてしまっていた。母親はただ、「神様はまだ食べないほうがいいと思っているみたいね」と笑顔で言っただけだった。

ガンジーが母の背中から学んだこと

このような「誓い」は、現代の私たちから見ると奇妙に感じられるかもしれない。しかし、誓いを守る母親の姿は、間違いなくバプジに大きな影響を与えた。

後にバプジは、政治的な理由で長いハンガーストライキを行い、世界の注目を集めた。

また、私がアシュラムにいたころ、バプジは毎週月曜日を沈黙の日と決めていた。そして自分の精神と欲求をコントロールするために、短い断食を行うこともあった。

バプジのこういった行動は、すべて母親から受け継いでいる。幼いころから母親の意志の強さに触れ、そしてバプジ自身も、大人になってから意志の強さで世界に影響を与えるようになった。

「言葉」より「行動・態度」が子供に影響する

大人は、自分の態度がどれだけ子供たちに影響を与えているか気づいていない。

子供たちは、大人の愛を感じ取るのと同じように、大人が自分を気にかけていないのも敏感に感じ取る。そして、大人の言葉ではなく、大人の行動を見て学んでいる。

もしあなたが親なら、自分の子供にどんな手本を見せているだろう?

その手本は、大人になってからの子供の人生に、どんな影響を与えるだろうか?

(本記事は、『おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと』(アルン・ガンジー著、桜田直美訳)の一部を抜粋・編集したものです)