三越伊勢丹Photo:PIXTA

百貨店事業などを手掛ける三越伊勢丹ホールディングスが好調だ。地方を中心に倒産や閉店のニュースが相次ぐなど、厳しい印象も強い百貨店業界で好業績を叩き出せる理由とは何か。決算書から読み解いてみよう。(中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授 矢部謙介)

過去最高の営業利益を
叩き出した三越伊勢丹HD

 コロナ禍を経て、百貨店などの事業を展開する三越伊勢丹ホールディングス(以下、三越伊勢丹HD)の業績が好調だ。

 2025年3月期の売上高は約5560億円、営業利益は約760億円となり、3期連続の増収増益となった。また、営業利益は2期連続で過去最高益を更新しており、売上高営業利益率(=営業利益÷売上高)は約14%に達した。

 百貨店業界といえば、長らく構造不況業種ともいわれ、地方を中心に百貨店の倒産や閉店が相次いでいた。例えば、00年には大手百貨店のそごうグループが経営破綻。近年でも山形県唯一の百貨店であった大沼が20年に破産するなど、厳しい状況が続いてきている。

 そんな中で、三越伊勢丹HDが過去最高益を叩き出すに至った理由とは何だったのか。

 利益の急拡大には、コロナ禍を経てインバウンド需要が戻ってきたことも影響しているが、要因はそれだけではない。また、売上高営業利益率が非常に高い水準にまで上がった背景の一つには、「22年3月期における売上高の大幅減少」があった。これは一体どういうことなのか。

 これらの点について、決算書をひも解きながら解説していこう。