3.11の避難所で子どもが夜中に
『アンパンマーン!』と叫んだ

 また、戸田さんはこんなことも聞かせてくれた。

「避難所で子どもが夜中に『アンパンマーン!』と叫び、大人たちは、アンパンマンは来ないと知っているので胸を痛めたそうなんです。それでも、なんだかみんな、その子どもの言葉に和んだという話を聞いて、嬉しいなぁと思いました」

 できることをやった結果がアンパンマンを生み、人々の心の救済になった。そんな体験を、身をもって知っている戸田さんの『あんぱん』出演は必然だったのだろう。

「テレビアニメの『それいけ!アンパンマン』スタート時、初回の台本を読んでアンパンマンのセリフに涙しました。同様に、今回『あんぱん』の台本を手にしたときもうれしくて泣けてきました。こんなにも立派な正義のセリフをいただいて、とても幸せに思います」

“アンパンマンの声”戸田恵子が、朝ドラで“アンパンマン感ゼロ”の理由とだ・けいこ/声優、俳優、歌手。1957年9月12日生まれ、愛知県出身。NHK名古屋放送児童劇団に入団、ドラマ『中学生群像』(『中学生日記』の前身)で俳優デビュー。1974年、あゆ朱美の芸名で演歌歌手としてデビュー。77年、劇団・薔薇座に入団し舞台で活躍。79年、アニメ『機動戦士ガンダム』のマチルダ・アジャン役で声優活動が増える。同じ富野由悠季監督のアニメ『伝説巨神イデオン』では重要な役カララの声とエンディングテーマを担当し、以降、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』(三作目)鬼太郎役、『キャッツ・アイ』瞳役、『きかんしゃトーマス』トーマス役、『それいけ!アンパンマン』アンパンマン役などの声で人気を博す。俳優としては、ドラマ『ショムニ』シリーズ、『総理と呼ばないで』、NHK大河ドラマ『新選組!』(04年)、映画『清須会議』(13年)などで活躍。映画『ラヂオの時間』(97年)で第21回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。朝ドラこと連続テレビ小説には『チョッちゃん』『ちゅらさん』『純情きらり』『まれ』『なつぞら』と数多く出演している。
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