日本の旅行業法が厳しいワケ
歴史をひも解けば鉄道に端緒あり
そして日本の旅行業法は、諸外国に比べてかなり厳しく定められている。その理由をひも解くと、旅行業界の歴史が関係している。
日本の旅行業は、1905年に滋賀県の草津駅を出発して高野山や伊勢神宮に向かうパッケージツアーが提供されたことに始まる(この事業者は、現在はJR西日本の子会社である日本旅行となる)。
その後、鉄道会社やその外郭団体から多くの旅行会社が誕生したが、日本人の余暇を楽しむ文化が拡大し旅行業が発展するのと裏腹に、悪質業者による不正も相次いで起きた。そこで、1952年に旅行斡旋業法、71年には改正法として旅行業法が成立。以下のように定められた。
●旅行業社は営業補償金を法務局に供託する。その金額は海外・国内など営業範囲によって異なり、最も幅広い第1種だと7000万円にのぼる。
●営業のためには観光庁または都道府県に登録取得を行ったのち、管理者の選任や営業保証金が必要となる。また新規登録・更新時に一定の基準資産額が必要となる。
●旅行業社はその責任の有無に関わらず、一定の損害を与えてしまった場合、死亡補償金などの支払いを実施する。
●ホテル・輸送機関の部屋・座席について不足が発生させたことで旅行内容を変更した場合は、旅行会社が変更補償金を支払う必要がある。
●営業のためには観光庁または都道府県に登録取得を行ったのち、管理者の選任や営業保証金が必要となる。また新規登録・更新時に一定の基準資産額が必要となる。
●旅行業社はその責任の有無に関わらず、一定の損害を与えてしまった場合、死亡補償金などの支払いを実施する。
●ホテル・輸送機関の部屋・座席について不足が発生させたことで旅行内容を変更した場合は、旅行会社が変更補償金を支払う必要がある。
旅行業法が厳格なおかげで、休みを取ることが難しく、確実な旅行日程の消化が重視される日本人の旅行体験を守ることができたといえるだろう。
一方で近年は、時代に合っていないとの指摘もある。海外旅行をしたことがある人なら、街中の小さな旅行屋が現地のオプショナルツアーを外国人向けに販売している光景を見たことがあるだろう。しかし、ホテルや交通の都合まで旅行会社の責任になるなどツアーを作るリスクが大きい日本では、小さな旅行屋がツアーを造成することは難しい。
日本ならではの旅行業法は、現地でツアーを申し込む習慣のある外国人旅行客を相手にするには不利に働くこと、すなわちインバウンド商法に水を差している、業界の硬直化を招くとの批判もある。なお、旅行業法は手配代行については旅行業とは認めていない。
本題に戻ると、外資系サイトは、宿泊施設や交通機関と利用者を「仲介するシステムである」という観点から、旅行業法には登録せずにビジネスを行っている。日本の旅行業法で適用される手厚い補償は受けられないことを、覚えておきたい。