全世代からウケていた
トレンディドラマ黄金期のスター

 まず、キムタクがいかに稀有な存在であったかを強調したい。90年代を知らない若者にとっては「言うてもジャニーズのグループの中のひとりでしょ?」といった認識なのかもしれない。

 しかし当時と今で大きく違うのは、トレンディドラマの視聴率である。

 キムタクが出演したいくつかのドラマの視聴率を見てみよう。順に、タイトル(制作年)、平均視聴率、最高視聴率は次の通り。

・あすなろ白書(1993年) 27.0% 31.9%
・ロングバケーション(1996年) 29.5% 36.7%
・ラブジェネレーション(1997年) 30.8% 32.5%
・眠れる森(1998年) 25.2% 30.8%
・ビューティフルライフ(2000年) 32.3% 41.3%
・HERO(2001年) 34.3% 36.8%

 2025年現在、視聴率20%を超えるドラマは少なくなってしまった。これはインターネットや定額制動画配信サービスの普及によってコンテンツが爆増し、見る側の興味関心が分散されたためであり、仕方ない。

 しかしだからこそ今後、90年代〜2000年代初頭のようなオバケ視聴率を取る地上波ドラマが現れることは、なかなか考えづらい。

 キムタクはトレンディドラマの全盛期において、最も視聴率を取れる俳優の一人として10年近くその地位に居続けた。当時は小中学生からサラリーマン、OL、そして高齢者までが同じドラマを見る傾向もあった。だから全世代にとって、キムタクは主演を張ることのできるイケメン俳優であり、もはや好き嫌いを超越した存在でもあった。

 テレビをつければキムタクがいるということは、家に帰ればキムタクが目に入る、に等しい。実際には遠いけれど、心理的にはいつも近くにいるイケメン。それがキムタクだった。