背伸びしていい車に乗れる

「残クレ」とは「残価設定型クレジット」の略で、ここ10~20年で注目されるようになった自動車ローンである。残価を先に決めておいて残りの分を払う……というものだが、こういうのは文字の説明を読むより例を見た方がわかりやすい。

 たとえば300万円の車を買う際、3年後の下取り価格を100万円と設定して、残りの200万円の分を月々ローンで支払っていく。これが残クレで、普通の自動車ローンやカーリースよりも月々の支払いを安く抑えて結構いい車に乗れる手段となっている。

 そして3年なら3年、あらかじめ決めた期間を満了した時、車を100万円で買い取ってもらうか、それとも自身で買い取るかを選択することができる。自身で買い取る場合は100万円を現金一括かローンか選べることが多いが、再ローンは金利が割高になる傾向がある。

 期間終了時に当初の査定額通り100万円で買い取ってもらえればいいが、傷や事故などによる原状回復費用や、決められた走行距離をオーバーした場合は追加料金がかかるので、そこそこの緊張感をもって乗る自家用車ともいえる。改造なんかにも当然厳しい。3年たって査定額を大幅に下回り想定していたよりものすごい金額を請求された……といったトラブルもある。

 だから残クレは、マイカー感が普通の自動車ローンよりも薄く、しかしカーリースよりかは強く、色々気遣わなきゃいけないところはあるけど、なんといっても少し背伸びしていい車に乗れるのが最大最強のメリットである。

 以下余談である。残クレが注目され始めたのは近年の話だが、この仕組みを開発して市場に持ち込んだのはトヨタファイナンスの2007年が最初である。これに追随する形でほかの大手メーカーも残クレを導入した。

 しかし実は同様のシステムはすでにあって、これがオニキスという車屋の「新車半額ワンナップシステム」である。同社によればこれが日本初・実質的な元祖残クレで、1989年に導入が開始されたとのことである。

 平成の初めからあった残クレ型ローンが近年ようやく注目されたワケは、人々の生活財政の苦しさであろう。もはやローンでもリースでも車を持つことが難しいと感じられても、残クレは人々に夢をあきらめさせず、そこに救いの手(漠然とした営業チャンス)を差し伸べる光となったのであった。