「変革」から「勇翔」への
アップデートの中身

 こうした状況をふまえて、「勇翔」の中身を個別に見ていこう。同社はまず「変革」について、コロナ禍で厳しい経営環境に陥った期間もあった中、「社員一人ひとりが変革の『主役』となって『融合と連携』により事業全般にわたる構造改革を推進」したと振り返る。

 一方で「人口減少や少子高齢化に加え、コロナ禍によるライフスタイルやマーケットの変化の加速など、私たちが10年先に想定していた経営環境の変化が現在の課題として立ち現れている」ことを踏まえ、新たなグループ経営ビジョンを前倒しで策定した。

 具体的なメニューは経営ビジョンから切り離したと書いたが、事業領域ごとの戦略は、2023年の「グループ安全計画2028」、2024年の中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」や「Suica Renaissance」など、経営ビジョンをまたぐ形で個別に設定されており、運輸業については今年秋に「モビリティ中長期成長戦略」を発表する予定だ。

「変革」から「勇翔」へのアップデートについて、同社のパンフレットは以下の図の通り整理している。

 第一の「起点」は、「変革」の「鉄道起点からヒト起点への転換」から一歩踏み込んだ「ヒト起点のマーケットイン」とした。これは顧客や地域の潜在的あるいは顕在化したニーズや困りごとについて、表面的な分析ではなく「その人の想いや価値観に深く共感し、本質的な課題や欲求を共に探求」しながら、「安心や感動をもたらす新たな商品・サービスを創造」することを意味するという。

 これだけではイメージが湧きにくいが、その具体像のひとつが第二の「創造する価値」のアップデートだ。「変革」では「信頼」というブランドを基盤に、ヒトが生活する上での「豊かさ」を目指すとしていた。

 それを「勇翔」は、「お客さまや地域の皆さまの生活に寄り添ってビジネスを展開している企業グループ」として「社会課題や潜在ニーズに向き合い生活様式を革新し、思いやりとワクワクにあふれる社会」を創造する取り組みを「ライフスタイル・トランスフォーメーション(LX)」と定義した。