子育てや、会社での部下育成に
興味を持つようになる

●第二の課題:ジェネラティビティ(世代性)

 2つ目の課題は、ジェネラティビティです。ジェネラティビティとは、ジェネレーション(世代)とジェネレート(生成)、クリエイティビティ(創造性)を組み合わせた造語で、「世代を創造する」「後進を育成する」という意味です。

 米国の発達心理学者のエリク・H・エリクソンが提唱したライフサイクル理論に基づく概念で、ミドル・シニア世代の発達課題として位置づけられています。

人間の発達を一生涯にわたる「心理社会的発達の段階」として捉えた理論。たとえば、0〜1歳では基本的信頼感を得ることが、13〜21歳ではアイデンティティの確立が課題になる、といったもの。なお、エリクソンはアイデンティティという概念を確立した心理学者でもある。

 40代、50代になると、マネージャーにならなくても、どこかで「自分が、自分が」というスタンスのままでいることに虚しさを感じ、「この人生が終わったら何が残るだろう」という気持ちが自然に生まれるようになる。それがこの世代の特徴です。これは、自己愛、自己中心性やエゴイズムとは対極にあるものです。

 ある人は子育てにその答えを見つけ、ある人は会社での部下育成や、仕事の信念を後輩にインプットすることに意識を向け始めます。

 これが会社のマネジメントシステムと合致していれば問題ありませんが、最近は管理職という役割自体の責任が重すぎて、自然に湧き出る後進育成の気持ちと、プレイヤーをしながらマネジメントもするという役割がマッチしないケースが増えているという困難もあるようです。

●第三の課題:人脈課題

 3つ目の課題は、人脈課題です。これは、とくに転職の際に問題になるもので、困った時に助けてもらえる関係性をつくっておく必要があるなど、転職後の人間関係構築に関連します。

 ミドル・シニアになればなるほど、先ほどのアンコンシャス・バイアスで思考が凝り固まり、新しいことに挑戦できなくなります。人間関係面でも、いつのまにか自分と同じ世代の価値観の似た人たちとばかり「つるん」で、新しい関係性を作るハードルが高くなってしまいます。

 しかし、転職すると新しい人たちと関係性を築き、そこで馴染んでいかなければなりません。

 ミドル・シニアの転職が厳しいのは、入社後に人間関係を形成できないことが大きな要因の一つです。自分から話しかけることが難しい、信頼関係を築けないといった問題から、転職でつまずくケースが少なくありません。