パウエル議長はジャクソンホールで「慎重な利下げ開始」示唆も、トランプ関税とFRB分断に揺れる金融政策Photo:Bloomberg/gettyimages

米ワイオミング州で開かれたジャクソンホール会合で、パウエルFRB議長はインフレと雇用のリスクを踏まえ、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での0.25%利下げ再開を示唆した。株価は急伸し、市場には楽観論が漂っている。だが、トランプ関税の影響やFRB分断への懸念は根強く、米金融政策の行方は依然「データ次第」であることには変わりはない。(マーケットコンシェルジュ代表 上野泰也)

9月の利下げ再開を
示唆したパウエル議長

「ジャクソンホール会合」。米カンザスシティー地区連邦準備銀行が主催する毎年8月に恒例のシンポジウムで、保養地ワイオミング州ジャクソンホールが舞台である、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が8月22日、この会合で注目の講演を行った。

 市場の関心は、パウエル議長がどこまで利下げ再開の示唆に踏み込むかに集まった。

 ちょうど1年前、24年8月の講演でパウエル議長は、「物価の上振れリスクは減少し、雇用の下振れリスクは増加」との判断を口にした上で、「(金融政策を)調整する時が来た」と明言。利下げを始めることを強く示唆した。

 実際、9月の0.5%ポイント利下げを皮切りに、この年の年末までに3回、合計1%ポイントの利下げが行われた。(図表1参照)。

 その後、雇用の下振れリスクは減退。「トランプ関税」が物価を押し上げて期待インフレ率が上方シフトするリスクをFRBは警戒する姿勢を取っており、政策金利は今年7月まで据え置かれている。

 次ページでは、ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言の分析を交え、今後のFRBの金融政策の行方を予測する。