
矛盾するトランプ政権の原油戦略
価格押し上げと押し下げの政策が混在
OPEC(石油輸出国機構)プラスの有志8カ国は9月から日量54.7万バレルの増産に入る。
増産は5カ月連続となり、8カ国が原油価格下支えのために行ってきた日量220万バレルの自主減産の解消は、当初、1年半かけて進める予定だったが、半年で解消することになる。
前倒しの要因の一つには、トランプ政権が、原油価格の低下による国内経済のインフレ緩和や産油国のロシアやイランに外交圧力を強める狙いで、サウジアラビアなどに増産を働きかけたことがあるといわれている。
トランプ政権は、バイデン前政権の脱炭素推進を180度転換し化石燃料増産に踏み出し、国内の化石燃料開発を推進する政策を次々と実施しているが、これも原油供給などで優位に立つ「エネルギードミナンス(支配)」を確立し、経済競争力強化や外交・安全保障の面での「米国第一」の国益を実現しようという戦略の一環だ。
だが「エネルギードミナンス」戦略の内容は、原油価格を押し上げる政策と押し下げる政策が混在する。
化石燃料増産では、当面、石油企業に新規の採掘などを促すためには原油価格が上昇することが望ましいのに対して、国内のインフレやエネルギーコスト低下のためには原油価格下落を進める必要があるなど、相矛盾することにもなっている。
政権がその都度、何を優先するかで、原油価格が乱高下する懸念があり、世界の新たな混乱要因になりかねない。