デフレ脱却を見通す上で
「ダム論」を再検討
日銀は「総合CPI(消費者物価指数)で前年比2%」という「物価安定の目標」の下、「量的・質的金融緩和(QQE)」を行っている。ただし、単にCPIが上がればよいというものではない。実体経済の改善に裏付けられる形で、賃金が上がらなくてはならない。
2000年代初頭のゼロ金利解除時に盛んに使われた「ダム論」に立つのであれば、ダムを超えて川が下流に流れるように、企業の利益が家計に分配され始める(=賃金増)のはいつだろうか。そのために我々は、「ダムの水量」(企業の利益)、「ダムの高さ」(損益分岐点売上高比率)、「ダムの水圧」(設備投資)を見る必要がある。
経常利益(ダムの水量):
リーマンショック前に近づいたが
構図は「引き算型」
「ダムの水量」である日本企業の利益(ここでは経常利益)から見てみよう。今月、財務省より発表された『法人企業統計』(1~3月期)によると、経常利益は昨年7~9月期の年率48.7兆円(季節調整済み)を底として、今年1~3月期には同53.0兆円まで増加した(図表1参照)。これは、リーマンショック前の2007年10~12月期の同58.0兆円に迫る水準だ。